乳がん検診と自己検診はなぜ必要か~乳がんの画像診断の難しさをひも解く がん研有明病院乳腺センター 乳腺外科部長/第24回日本乳癌学会学術総会 会長 (現:名古屋第一赤十字病院 乳腺・内分泌外科 乳腺センター長) 岩瀬 拓士先生 2004年に40歳以上の女性を対象に2年に1回のマンモグラフィ検診が始まってから、はや10年が経過しました。女性の皆さんに乳がんのこと、自分の身体のことをもっとよく知っていただくために、岩瀬先生に「乳癌検診と自己検診はなぜ悪いか」というテーマでお話を伺いました。

 

  • 第1回 自己検診のスタートは正常な自分の乳房の状態を知るところから
  • 第2回 乳がん検診で得られる利益、心配される不利益とは
  • 第3回 ここが難しい! 乳がんの画像診断
  • 第4回 乳がんの死亡率低下をめざして、望ましい検診の受け方とは

<下記内容はインタビュー当時の情報に基づき作成しています>

第1回公開日:2016年8月19日

自己検診のスタートは正常な自分の乳房の状態を知るところから

乳がんは早く小さなうちに見つければ、乳房を残すこともリンパ節を取ることもなく治癒することも望めるがんです。
そして、自分で気づくことができる変化だからこそ、日頃から自分の乳房に関心を持って欲しい。
第1回は、自己検診の大切さと乳がん検診の対策型検診と任意型検診について教えていただきました。

乳がん検診を受けていても、自己検診は行うべきですか?

自己検診はとても重要です。医師が触るよりも自分自身が触って、正常なときの乳房をきちんと把握しておくことがとても重要なのです。なぜなら、一人ひとり乳房は異なり、経験豊富な医師が初めて触っても、それがその人の正常な状態なのかどうかは一度の触診だけではわからないからです。普段の状態は自分自身が一番良くわかるはず。だから、正常な時の自分の乳房をきちんと触っておくことが大切なのです。
正常な状態を知るために、まず一度はマンモグラフィ検査、超音波検査を受けましょう。それで異常がなければ、それがあなたの正常な状態です。次に家に帰って、その乳房を寝転がって触る、座って触るというようにとにかく自分で触って把握しましょう。

まずは一度きちんと検査を受けて、自分の正常な状態を知ることが自己検診のスタートですね。

自己検診でどのように判断すればよいでしょうか?

「自己検診」は「自己診断」ではありません。変化がないかどうか、普段と違う感じがないか、違和感がないかどうかを確かめることがとても大切で、それが自己検診の目的です。触り方に決まりはありません。手のひらを使って自分のやり方で触ってもらえばよいのです。例えば、あなたの誕生日の日にちでも、毎月1日でもよいので、月に1回は日にちを決めて、自己検診をしましょう。特に何も違和感を感じなければ問題なしと思って結構です。
保健所などには乳がん触診モデルがあり、触ったことがある人も多いと思います。ときに、保健所で触った乳がんモデルと、自己検診で触った感触が違うから大丈夫じゃないかと受診が遅れてしまう人がいますが、要注意です。普段から乳房が硬く触れる人もいますし、感触は人それぞれですから、一概に触診モデルと比較はできません。自分の正常な状態を知り、そのときの状態と今の状態に変化がないかを比べてください。痛みも負担もなく、自分でできることなのでぜひ続けていただきたいと思います。

自己検診は自分で診断しようとせずに、普段と違う感じがないかどうかを触って確かめればよいのですね。
それにはまずは正常な状態をきちんと把握することが大切ですね。

自己検診はいつから始めたらよいでしょうか?

岩瀬 拓士先生

自己検診を何歳から始めるのが妥当かは、家族に乳がんの人がいて遺伝性のリスクが高い人なのかどうかにも依ります。特にリスクの高い人でなければ30歳過ぎ、あるいは40歳くらいからでよいでしょう。なぜなら20代の乳がんは全体の乳がんの中で1%ぐらいしかいないからです。しかし、あなたの母親や母親の姉妹(おばさん)がともに乳がんである等の場合は遺伝性の可能性が高いかもしれませんので、20歳を過ぎたら始めてもよいかもしれません。最初は超音波検査やマンモグラフィ検査できちんと診てもらって、異常がないことを確認してからスタートするのがよいと思います。その後は頻繁には画像検査を受ける必要はなく、変化を感じなければ自己検診を続けてください。そして、自治体で行っている対策型がん検診(後述)の対象年齢になったら、そちらも受けてください。

「対策型がん検診」とはどういうものですか?「任意型がん検診」もあると聞きますが。

40歳以上の女性を対象に2年に1回実施しているマンモグラフィ検診を対策型検診といいます。対策型がん検診は、費用の全額あるいは一部を公費でまかなっているもので、日本人女性全体の乳がんの死亡率を下げようという目的で行っています。国として対策型検診にかかった費用に対して、どれだけの効果が上がったかという「費用対効果」*を計算した上で、検診を実施することによる利益とのバランスを図っています。
なぜマンモグラフィなのかというと、世界中で検診の実績があり、乳がんの死亡率を下げる効果があると証明されているからです。
それに対して、人間ドック型の検診は任意型検診といい、個人の判断により自己負担で行われる検診なので、被曝の不利益が生じない範囲で、どれくらいの間隔で受けても構いません。
対策型がん検診では2年に1回ですが、マンモグラフィは毎年撮っても被曝の点では問題ありません。
対策型がん検診と任意型がん検診を大まかに比較してみると、表のようになります。

*ここでの費用とは、対策型検診を実施する全体の費用のことです。効果とは、国民全体で、進行してから発見された場合の治療費と比べて早期発見によって減らせる治療費や、乳がんによる死亡率の減少によって減らせる社会的損失のことです。検診にかかる費用が、削減できる費用に見合うかどうかを計算し、現在は40歳以上の女性を対象に2年に1回のマンモグラフィ検診となっています。

              

日本では乳がんの発症年齢は40歳代後半~50歳代に一番のピークがあるので、ピーク付近の年齢の方は毎年受けたほうが安心でしょう。任意型がん検診では検査費用の負担はありますが、早く見つかって切除範囲の小さな手術、負担の少ない治療で済めば、進行がんより治療費も抑えられます。任意型検診も合わせて上手に受けていただくとよいと思います。

「対策型がん検診」と「任意型がん検診」とは聞き慣れない言葉でしたが、
公費で行う住民検診と自らの希望で受ける人間ドックということですね。

第1回は、自己検診の大切さについて解説していただきました。まずは自分の乳房に関心を持ち、正常な状態を知ることがスタートです。
あなたもまず自分の乳房の状態を確認してみましょう。
次回は、マンモグラフィ検査と超音波検査の違いや、乳がん検診のメリットとデメリットについてお話を伺います。

次のインタビューへ 第2回 乳がん検診で得られる利益、心配される不利益とは
2018年12月

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