乳がん検診と自己検診はなぜ必要か~乳がんの画像診断の難しさをひも解く がん研有明病院乳腺センター 乳腺外科部長/第24回日本乳癌学会学術総会 会長 (現:名古屋第一赤十字病院 乳腺・内分泌外科 乳腺センター長) 岩瀬 拓士先生

  • 第1回 自己検診のスタートは正常な自分の乳房の状態を知るところから
  • 第2回 乳がん検診で得られる利益、心配される不利益とは
  • 第3回 ここが難しい! 乳がんの画像診断
  • 第4回 乳がんの死亡率低下をめざして、望ましい検診の受け方とは

<下記内容はインタビュー当時の情報に基づき作成しています>

第3回公開日:2016年9月30日

ここが難しい! 乳がんの画像診断

第2回は、乳がん検診の重要性には変わりありませんが、早期発見早期治療を目指したときに生じる、
検診のメリットとデメリットについて解説していただきました。
第3回は、マンモグラフィ検査と超音波検査の違いや、乳がんの画像診断の難しさについて解説していただきます。

なぜ対策型乳がん検診では超音波検査ではなく、マンモグラフィ検査なのでしょうか?

対策型乳がん検診でマンモグラフィ検査が行われているのは、第1回でお話ししたように、費用対効果が検証されていて、日本では40歳以上の女性に2年に1回マンモグラフィ検査を実施するのが妥当であるとされているからです。マンモグラフィ検診は世界で行われていて、乳がん死を15~20%減らせるということがわかっています。
超音波検査も早期診断の点では優れていますが、超音波検診での費用対効果の確かなデータがないため、現時点では対策型の乳がん検診には導入されていない地域がほとんどです。
任意型の乳がん検診ではどちらもできますし、マンモグラフィ検査と超音波検査は全く違うものですから、両者を併用するのがよいでしょう。
超音波検査はどちらかというと触診に近いイメージです。触診に近いとは言っても、検出精度は比べものにはならないほど高く、触診で触れるしこりは超音波検査では100%見逃しません。ですが、マンモグラフィ検査では、例えばDense Breast(デンスブレスト;後述)の場合、触診でもわかるしこりがあったとしても真っ白に写ってしまうので覆い隠されてしまい、診断できないということが起こり得ます。

マンモグラフィの弱点、Dense Breastとはどういうものですか?

Dense Breastは、脂肪に比べて乳腺の占める割合が多い(乳腺の密度が濃い)ために、マンモグラフィでは真っ白に写ってしまい、がんのしこりが見つけづらいタイプの乳房です。欧米に比べると日本人女性、特に若い女性はDense Breastの方が多いので、マンモグラフィでは、がんが隠れていても「異常はみつかりません」と見逃されてしまう可能性があります。そのため、40歳代以下の女性の場合、マンモグラフィ検査だけで十分とは言えず、マンモグラフィの弱点を補うために、任意型なら超音波検査を追加するのがよいでしょう。

では、超音波検査のほうが対策型検診に向いているのでは?

マンモグラフィ検査はDense Breastは苦手で、超音波検査のほうがしこりを見つけるのが得意だとすると、超音波検査のほうが対策型の乳がん検診に適しているのでは?と思われるかもしれません。
確かに、超音波検査には優れた点がたくさんありますが、マンモグラフィ検査の方が良いところもあります。第一には、写真をきちんと撮っていれば後から見直すことができることです。以前に撮った写真とも比較することができるため、経過を観察する場合にも適しています。
超音波検査では、検査をする人が疑わしいと思った部分の断層写真を撮りますが、そこに気づかなければ写真を撮らないため何も証拠が残りません。つまり検査する人の技量に大きく左右され、その技術を習得するまでには長い時間がかかります。そのため、対策型検診で広く実施できるほどの多くの技術者が育成されていないという課題もあります。
マンモグラフィ検査でも技術的な課題がないわけではありません。早期診断のためには、小さながんを見逃さないように、さらに読影の精度を高める必要があります。そのため、日本乳がん検診精度管理中央機構では、マンモグラフィ講習会や超音波講習会を実施し、精度を一定に保つための教育研修を行うとともに、一定の基準に従って評価を行い、撮影技術や読影の精度の向上に努めています。

岩瀬 拓士先生

マンモグラフィ検査と超音波検査の得意なところ、不得意なところをまとめると…

マンモグラフィ検査は、早期乳がんのサインといわれる石灰化を見つけるのはとても得意で、早期発見にはとても重要です。しかし、触診で触れない石灰化は非浸潤がんであることも多いため、過剰診断になる可能性も否定できません。また、年齢が高くなると乳腺の密度が薄くなってくるので、マンモグラフィ検査でもしこりを見つけやすくなります。
一方、超音波検査は小さなしこりを見つけるのが得意です。Dense Breastのしこりでも見つけることができます。小さな浸潤がんを見つけることが検診の一番の目標ですから、乳がん検診に有用ではないかと考えられます。しかし、検査する人の技量に左右され、全体としての記録が残せないという難点があります。また、現時点ではその確かなデータがないため、対策型検診として有用かどうかを検証すべく、40歳代女性を対象とした臨床試験が行われています。
マンモグラフィ検査と超音波検査はそれぞれの得意分野が異なるので、現状では対策型検診と任意型検診で両者を上手に組み合わせ、検査するのが望ましいでしょう。
なお、マンモグラフィ検査では被曝について心配される方がいらっしゃいますが、年に1回の撮影では問題ないことがわかっています。

  

マンモグラフィ検査と超音波検査はそれぞれ得意な分野が異なり、対策型の乳がん検診では
マンモグラフィ検診が行なわれていますが、両者を組み合わせて受けるのがよいことがわかりました。

次回の最終回では、私たち一人ひとりや医療者がそれぞれ努力すべきことや、
望ましい検診の受け方などについてお話を伺います。

次のインタビューへ 第4回 乳がんの死亡率低下をめざして、望ましい検診の受け方とは
2018年12月

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