乳がん検診と自己検診はなぜ必要か~乳がんの画像診断の難しさをひも解く がん研有明病院乳腺センター 乳腺外科部長/第24回日本乳癌学会学術総会 会長 (現:名古屋第一赤十字病院 乳腺・内分泌外科 乳腺センター長) 岩瀬 拓士先生

  • 第1回 自己検診のスタートは正常な自分の乳房の状態を知るところから
  • 第2回 乳がん検診で得られる利益、心配される不利益とは
  • 第3回 ここが難しい! 乳がんの画像診断
  • 第4回 乳がんの死亡率低下をめざして、望ましい検診の受け方とは

<下記内容はインタビュー当時の情報に基づき作成しています>

第4回公開日:2016年10月14日

乳がんの死亡率低下をめざして、望ましい検診の受け方とは

第3回は、マンモグラフィ検査と超音波検査の違いや、乳がんの画像診断の難しさについて解説していただきました。
最終回の第4回は、私たち一人ひとりや医療者がそれぞれ努力すべきこと、
望ましい検診の受け方などについてお話を伺いました。

日本人女性一人ひとりが努力すべきことは?

乳がんは、早く小さなうちに見つかれば身体への負担の少ない治療も可能になり、治癒を望むことができるということを女性の皆さんに知っていただきたい。これまであまり関心のなかった人にも是非知っていただきたいと思います。
そして、乳がん検診の利益だけでなく、不利益も理解した上で、定期的に受けてください。
あなたの乳房の変化は、あなた自身が一番気づくはずです。だからこそ自己検診もとても重要です。自分なりのやり方でよいので、月に1回は忘れずに続けてください。
継続して触っていれば小さな変化があったときに、「ここがおかしい。いつもはこんな感じではなかった」ときっと気づきます。そのときには良いか、悪いかを自分で決めなくてよいのです。「これは硬いからがんかもしれない、軟らかいから大丈夫」などと自分の知識で勝手に判断しないことです。いつもと違うことが起こっていたら病院に行き、その状況をきちんと伝えてください。それが自己検診ではとても重要なことです。
ときに心配性な方もいらっしゃいますが、少し痛みを感じたようなときにもまずは自分で触って、いつもと同じ感触かどうかを確かめてみてください。痛みを感じたとしても、しこりもなく以前と同じ感触であれば心配しないで、次の定期検診のときまで待っていてよいと思います。

自己検診の重要さを改めて認識しました。そして、良いか悪いかは自分で判断せず、
「いつもと違うかどうか」に気づくことが大切だということですね。

医療者が努力すべきことは?

われわれ医療者は検診を行う限り、より小さな、より早期のがんを診断することを目的に今後もその努力を続けていきます。また、日本人女性全体の乳がんの死亡率の減少を達成するには、対策型検診の受診率をもっと上げる必要があります。組織立って受診を促すことが必要かもしれません。
数年前にアメリカでは、40歳代女性に対して、対策型の乳がん検診は推奨しないという発表がありました。アメリカは日本と比べて、乳がん発症のピークが60歳代以上と高く、40歳代の発症率が低いため、不利益のほうが大きいと考えられたからです。それに対して、日本では45歳代後半~50歳代にピークがあるため、対策型検診から40歳代を外す訳にはいきません。しかし、40歳代女性にはマンモグラフィ検診だけでは小さなしこりを見逃す可能性があるため、今後は、超音波検診の導入についても検討していく必要があるでしょう。
また、検査精度の向上を目指して、日本乳がん検診精度管理中央機構で講習会などの教育研修が続けられています。一方、デジタル技術が進歩し、遠隔診断が可能となってきた現在では、各地で撮影した写真を中央の読影センターに集め、技術的に卓越した読影者が読めば、読影者を全国に配置しなくても質の高い読影が可能となるでしょう。遠隔診断という方法も将来可能性があるかもしれません。
一方、検診の精度を上げても、過剰診断をなくすことはできないため、われわれ医療者は患者さんの不利益にならないように、過剰診断による過剰な治療が行われないように努力していくことも必要です。そして、乳がん検診を受ける女性に十分に情報提供し、理解していただいた上で検診を受けていただけるように導きたいと考えています。

岩瀬 拓士先生

望ましい乳がん検診の受け方とは?

乳がん検診の受け方は年齢や発症リスクによって異なり、また乳がん検診の利益と不利益をどう捉えるかという価値観にもよるかもしれません。
基本的には、乳がん発症のピークの年代である40~50歳代女性には、2年に1回の対策型のマンモグラフィ検診を受けて、マンモグラフィ検診を受けない年には任意型検診で超音波検診を受けるなどして、両者を組み合わせて経過を確認しつつ、自己検診も継続して変化がないか確かめていただきたいと思います。
40歳未満の方で、遺伝性の疑いのある方以外は、一度超音波検査を受けていただき、自分の正常な状態を確認したら、月に1回の自己検診を続けてください。早く見つければ見つけるほど病気の進行、転移、再発を起こさなくてすみます。
もしもあなたの母親や姉妹、おばさんがともに乳がんであったり、遺伝性乳がんの可能性が疑われる場合には、20代から乳がん検診を受けた方がよいでしょう。また、遺伝カウンセリング*を受けておくとよいかもしれません。乳がん検診を受ける場合、マンモグラフィでは若い女性のDense Breastにはしこりが見つけづらいので、超音波検査か、MRIになります。問題がなければ、画像検査は頻繁に受ける必要はありませんが、自己検診をきちんと行ってください。

*遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)の遺伝カウンセリングでは、詳細な病歴や家族歴を聴き、HBOCの可能性について評価し、専門的な情報提供や心理的な支援を行い、遺伝子検査をするかどうかなどについても話し合います。保険適用ではないため、自費診療になります。また、実施している施設も限られています。

岩瀬先生には、乳がん検診のメリットだけでなく、
過剰診断という難しい課題があることについても率直に丁寧に教えていただきました。
皆さんには、マンモグラフィ検診と超音波検診を組み合わせて定期的に受けていただきたいと思います。
そして、自分の体の変化に気づけるように、自己検診も月に1回忘れずに行いましょう。
乳がんになっても、小さく見つけて治癒につなげるために。
岩瀬先生、本当にありがとうございました。

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2018年12月

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