インタビュー

がんになっても安心して暮らせる社会を 〜腫瘍内科医(オンコロジスト)の役割とは 日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科 教授 勝俣 範之先生 2人に1人ががんになるという現在、がんになっても安心して暮らせる社会をめざすには、体験者や医療従事者だけでなく、社会のみんなががんという病気のことを正しく理解することが大切です。いつもがんサバイバーのみなさんのために尽力されている勝俣先生に、がんの総合内科医である腫瘍内科医の役割や、がんになっても安心して暮らせる社会のために望むことを伺いました。

 

  • 第1回 がんと診断された時からが「がんサバイバー」
  • 第2回 腫瘍内科医は患者さんの治療コーディネーター
  • 第3回 抗がん薬治療を続けながら、がんと共存する人を支える
  • 第4回 がんになっても安心して暮らせる社会をめざそう

第1回公開日:2017年4月25日

がんと診断された時からが「がんサバイバー」

最新のがん統計によれば、生涯でがんにかかる確率は男性63%、女性47%と報告されています。
男女とも2人に1人はがんになる時代、がんになることは決して他人事ではありません。
あなたやあなたの大切な人ががんになったとき、どのように考えたらよいでしょうか。
第1回は、がんサバイバーになったとき、どのように向き合ったらよいかについて教えていただきました。

がんサバイバーとは?

勝俣 範之先生

がんサバイバーとは、がんが治癒した人だけを意味するものではありません。がんと診断された直後から、治療中の人も含めて、がんサバイバーと世界的に呼ばれています。つまり、がんを体験した人はそのみんなががんサバイバーです。サバイバーというと、生き残った人と思われるかもしれませんが、そういう意味ではありません。
ある乳がんの患者さんが講演の中でお話しされていたのですが、その方は乳がんと診断されて、がんに打ち勝ちたい、克服したいと考えていたそうです。しかし再発して、がんに負けたと思ってしまい、がっくり力を落としてしまいました。そんなとき、アメリカではがんと診断された人はそのみんなをがんサバイバーと呼ぶということを知ったそうです。さらに、英語の“survive”の語源をみてみると、“sur”は「超えて、上を」という意味で、“vive”というのは「生きる」という意味と知り、その上を生きること、つまり「新しい人生を生きる」と考えたとき、がんを怖がって逃げるのではなく、前向きにとらえられるようになったそうです。surviveはとても良い意味の言葉だなと思いますね。

がんを克服するという言葉をよく耳にしますが

がんを克服するのではなく、共存する、と言っていただきたいですね。克服したという言い方は医学的にはあまり使われません。なぜかというと、がんはいつ再発するかわからないからです。5年生存率、10年生存率という言葉がよく使われ、5年後、10年後が一つの目安とされますが、5年あるいは10年経過した後も再発する可能性がゼロではありません。残念ながら、いつまで経っても克服できたとは言いにくい病気なのですね。ですから、「克服する」ではなく、「共存する」と言っていただきたい。
とくに再発がんは克服するのが目標ではなく、より良く共存することを目標とすべきなのです。
がんとより良く共存することをサポートするのが腫瘍内科医と言えます。
新しいがん統計によれば、日本人女性が生涯で乳がんにかかる確率は11人に1人と推定されています[]。女性のがんサバイバーの中では乳がんが最も多いと言えます。そして乳がんは他のがんに比べて比較的年齢の若い人がかかりやすく、家庭の中心であったり、社会で活躍している年代の人が多いことからも、乳がんサバイバーを社会全体で支えることは大切なことではないでしょうか。

  

がんサバイバーの目標は、がんは克服するのではなく、がんとより良く共存することなのですね。
がんになっても「新しい人生を生きる」と前向きにとらえられると良いですね。
ですが、再発したときは初めて診断された(初発)時よりも不安になるのではないでしょうか。

再発したとき、初発時より一層不安になると思います。どのように向き合えばよいでしょう?

再発と診断されたら、気が気ではありません。すぐに治療しないと手遅れになるのではないかと不安になるでしょう。そのような時、「あわてず、あせらず、あきらめず」が大切です。この言葉は古い格言のようですが、再発がんの付き合い方にもよくあてはまる言葉で、患者さんにもよくお話ししています。
なぜあわてなくてよいかというと、早期がんでは早期発見・早期治療が治療成績につながるというエビデンス(科学的根拠)がありますが、再発がんの場合、そのようなエビデンスがありません。だからといって、あきらめるということではありません。再発乳がんにも 抗がん薬の治療はもちろん有効ですが、あわてて早く始める必要はない、ということです。医師も再発の診断・治療を慎重に行います。そういう意味で「あわてず、あせらず、あきらめず」という姿勢が大切です。
それにもう一つ付け加えるとすれば、「正しくおそれる」ということでしょうか。やはりがんは怖いからと真実を知るのをためらって、逃げたくなりますよね。それは知らないから余計に怖くなるとも考えられます。この先どうなるかわからないから怖いわけで、その状況に応じた対処法があるということがわかっていれば、おそれが減ることもあるでしょう。そういう意味で「正しくおそれる」ということです。ただし、それは患者さん一人でできることではありません。そこはわれわれ医療者がサポートすべきところで、どんな状況になっても手段がありますという情報を提供することが腫瘍内科医の役割の一つです。

がんサバイバーの定義やがんに対する向き合い方についてお話しいただきました。
日本人女性が生涯で乳がんにかかる確率は11人に1人になりました。がんサバイバーは決して他人事ではありません。

第2回は、腫瘍内科医の役割について詳しく教えていただくとともに、緩和ケアの大切さについてもお話しいただきます。

次のインタビューへ 第2回 乳がん検診で得られる利益、心配される不利益とは

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