がんになっても安心して暮らせる社会を 〜腫瘍内科医(オンコロジスト)の役割とは 日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科 教授 勝俣 範之先生

  • 第1回 がんと診断された時からが『がんサバイバー』
  • 第2回 腫瘍内科医は患者さんの治療コーディネーター
  • 第3回  抗がん薬治療を続けながら、がんと共存する人を支える
  • 第4回 がんになっても安心して暮らせる社会をめざそう

インタビュー

第4回公開日:2017年6月9日

がんになっても安心して暮らせる社会をめざそう

第3回は、がんとより良い共存を続けるために知っておきたい薬物療法の知識について、
がん薬物療法の専門家としてお話を伺いました。
第4回は、がんになっても安心して暮らせる社会をめざし、医療者側がすべきこと、
社会のみんなに考えてほしいこと、そして乳がんサバイバー(乳がんと診断されたかた)へのメッセージを伺います。

日本では腫瘍内科医がまだまだ少ないと聞いています。

2人に1人ががんにかかる現在の日本、必要な腫瘍内科医の数は5,000人とも言われています。ところが、2005年に作られたがん薬物療法専門医の認定者数は1,101名(2016年10月時点)と十分とは言えません。
ですが、患者さんの生活の質を考えた治療や緩和ケアは腫瘍内科医がいなくても、外科医だけに頼らず、チーム医療として取り組むことができれば可能です。チーム医療で大切なことは「一緒に関わる」ということです。チーム医療は役割分担と勘違いされる場合がありますが、医師の仕事はここまで、看護師の仕事はこれだけというように、きっちり役割を分担するのではなく、「役割をシェア(共有)する」ことがチーム医療を上手に運ぶために重要なことです。それぞれが患者さんに積極的に主体的にかかわって役割をシェアすることなのです。
例えば、患者さんが看護師に質問された時、自分で答えられる範囲で答えて、その場でわからないことは、「チームで話し合っておきますので、次にお会いするときにお答えしますね」と伝えて、その情報をチーム内でシェアして患者さんのより良いケアに繋げられたら患者さんは安心ですね。大切なことは、情報を上手にシェアすることと、患者さんと一緒に関わることです。

患者さんが中心にいて、チームのスタッフみんなが情報をシェアしてくれていたら安心ですね。

患者さんのより良い共存に繋げるために、チーム医療として重要なことは?

当院では、患者さんとの話が長くなりそうな場合、例えば、今後のことについて話す場合や治療を切り替えるときなどには、看護師に同席してもらうようにしています。患者さんの話を同時にシェアしたほうがわかりやすいですから。別々の場所で情報を伝えるのは正確に伝わらないことがあったり、なかなか難しいものです。当院ではがん専門看護師は病棟や外来に配属せず、フリーでいてくれるので同席してほしいときには電話をするとすぐ来てくれて一緒に話を聞いてもらいます。その場で情報をシェアできるので、必要があれば、診察の終わった後に待合室で話をもっと詳しく聞くこともできるわけです。
フリーの看護師を置くのは難しいところもあるかもしれませんが、役割をシェアするということは工夫次第で取り入れられることではないでしょうか。

ピンクリボン運動だけではない、社会のみんなに心がけていただきたいことは?

残念なことに、日本では社会全体ががんの患者さんを受け入れているとはまだまだ言い難い環境です。自分ががんであることを職場などではなかなか言いづらいのではないでしょうか。その点は海外と比べると遅れていると感じています。アメリカでは、職場はもちろん、自分の身の回りの人に「がんになりました」と言うと、「よく頑張っているわね。偉いわね」と拍手されるくらいです。日本では偏見みたいなものがあって、どちらかというと話題を避ける、そのことに触れない雰囲気がありませんか。まだまだ社会全体ががんという病気を理解していないのが残念です。「がんと共存できる時代なんですよ」ということをもっと言わなくちゃいけないですね。
アメリカで始まったピンクリボン運動は、乳がんで亡くなられた患者さんの家族が「このような悲劇が繰り返されないように」との願いを込めて作ったリボンからスタートした啓発活動です。早期発見、早期治療することだけが目的ではなく、「乳がんにかかった人を応援しましょう」という目的も本来の趣旨であることを忘れないでいただきたいと思います。

ピンクリボン運動は、もともとは「乳がんサバイバーを応援しましょう」という
乳がん患者さんのご家族の想いから始まったのですね。

乳がんサバイバーの方へ伝えたいことは?

乳がんと診断された時からがサバイバーです。腫瘍内科医は患者さんと二人三脚で乳がんに向き合っていきます。初期の治療ではがんの治癒をめざして一緒に積極的な治療に取り組んでいきましょう。副作用も支持療法によって随分コントロールできるようになってきました。副作用を我慢し過ぎず、つらいと感じたときには遠慮せずに伝えてください。
今はがんと共存できる時代です。たとえ再発したとしても、より良い共存を続けていくことができるようになってきました。より良い共存を続けるためには「あなたにとって何が大切か」を医療者に伝えていただくことが大切で、われわれ医療者は患者さんの生活の質を大切にし、「あなたに適した治療のしかた」を考えます。緩和ケアもより良い共存を続けるために有用な治療の一つです。
不安なこと、気になることがあったら、遠慮せずに話してください。知らないまま不安を持ち続けずに、真実を知ることをおそれずに、一緒により良い共存をめざしましょう。どんな状況であってもわれわれがサポートし、決して見放すことはありません。それが腫瘍内科医の役割です。
がんに対する偏見をなくし、みんなががんサバイバーを応援する、そんな社会が実現できることを期待します。

腫瘍内科外来のドアの外側にも勝俣先生が

勝俣先生は長時間にわたり、とても温かいまなざしでさまざまなお話ししてくださり、
がんサバイバーを勇気づけてくださるたくさんのメッセージをいただきました。
これからもがんサバイバーの心強い味方としてご活躍してくださることを心からお祈りしています。
そして、がんとより良い共存を続けるために、「がんになっても安心して暮らせる社会」が実現できますように。
勝俣先生、本当にありがとうございました。

勝俣 範之先生(2017) トップへインタビュー トップへ

ご利用ガイド

先頭に戻る