若年乳がん女性のサバイバーシップ支援とは 〜乳腺外科医からのメッセージ 独立行政法人 国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究センター長 (現:がん研有明病院 副院長 乳腺センター長) 大野 真司先生 九州地区のみならず、全国にむけて多方面にわたる啓発活動を精力的に続けていらっしゃる大野 真司先生。今回は「若年乳がん女性のサバイバーシップ支援*」をテーマに、大野先生の様々なエピソードを交えて、これまでの成果や今後の取り組みなどについてお話をお伺いしました。*がん体験者の方への社会生活における支援のこと

  • 第1回 若年乳がん患者さんが抱える悩みとは?
  • 第2回 みんなに知ってほしい!サバイバーシップ支援とピアサポート
  • 第3回 ひとりじゃない!周囲のみんながあなたをサポートしてくれる
  • 第4回 今、サバイバーシップ支援に求められていること。これからの道のりは?

<下記内容はインタビュー当時の情報に基づき作成しています>

第1回公開日:2014年9月26日

若年乳がん患者さんが抱える悩みとは?

乳がんの患者さんには、女性だからこそ、比較的若い方が多いからこその悩みも多く、乳がんの発症がその後の人生に様々な影響を及ぼします。そこで近年、乳がん治療を発展させるだけでなく、患者さんの生活をサポートする活動も盛んになり、若い女性が乳がんになっても、叶えたい夢や目標をあきらめない人生を過ごせるように、様々な取り組みが始まっています。
第1回は、そもそも若年乳がんとは?からお話を伺い、大野真司先生が代表として推進されている厚生労働省がん研究助成金事業指定研究「若年乳癌患者のサバイバーシップ支援プログラムの構築に関する研究」(以下、指定研究)のことや、出産を希望する患者さんの願いを叶えるために取り組まれているネットワーク作りについてお伺いしました。

“若年乳がん”とは何歳くらいの方のことでしょうか?どれくらい患者さんがいるのでしょうか?

英語では、“young breast cancer”というと40歳未満の患者さんを指し、“very young breast cancer”といえば35歳未満の患者さんを指します。しかし、日本では患者さんのライフスタイルを中心に考えることが大切であるという考えから、妊娠・出産を望む患者さんや、主に小学生以下の子育て中の患者さんを対象と考えています。実は、日本では「若年乳がん」に年齢の定義はありません。
ちなみに乳がんと診断される年齢の割合は、おおよそ35歳未満は2%、40歳未満は7%です1)。毎年、40歳未満の女性が3,000人以上も乳がんになっているのです。
40歳未満の方はマンモグラフィ検診の対象となっていないため、発見は自己触診による場合が多く、遅れがちです。残念ながら、しこりに気がついたときには病期が進んでしまっている場合が少なくないのが現状です。しこりが大きくなる前に発見できるように、若い女性の皆さんにも毎月の自己触診を継続していただき、少しでも普段と違う変化や違和感があったら、早めに受診していただきたいと思います。
1)日本乳癌学会:全国乳がん患者登録調査報告2011年次症例より

今や年間70,000人もの日本人女性が乳がんにかかっているといわれています*。「まだ若いから」、「まさか私が」と思わずに、毎月の自己触診を行うことが大切なのですね。
*2017年には、約90,000人の日本人女性が乳がんにかかっていると予測されています。

乳がんになっても、出産したいときはどうしたらよいでしょうか?

大野  真司先生

これは、若い乳がん女性にとって大きな悩みの一つであり、指定研究で取り組もうとしている大きな課題でもあります。
まず、乳がんの治療(薬物療法、放射線療法を含め)中の妊娠はやはり避けるべきです。それは、ほかの病気で治療している時に妊娠を避けるのと同じです。また、乳がんでは化学療法を行うと卵巣機能がダメージを受けて、一旦、月経が止まってしまうということがあります。しかし、40歳未満の患者さんでは化学療法が終われば7割以上の方は1年以内に再開することがわかっています。再開すれば妊娠は可能ですが、化学療法後さらに術後ホルモン療法を5年間(あるいは10年間)行うとすれば、ホルモン療法が終わるまで妊孕性を保つことは容易ではありません。そこで最近になって、ようやく生殖医療医(不妊治療を行う医師)とがん治療医のネットワークを作ろうという動きが始まり、妊娠・出産を希望する場合には、卵子あるいは受精卵を凍結保存するという方法が検討され始めました。これまでは情報がないために、妊娠を希望する乳がん患者さんは自ら生殖医療医を探すしか方法がありませんでした。
これからは、患者さんが自ら探さなくても、生殖医療医とがん治療医が顔の見えるネットワークを作り、相互に連携できるようになることを目ざしています。
2013年には、日本初の「岐阜県がん・生殖医療ネットワーク(GROFs)」が立ち上がり、また、福岡においてもがん・生殖医療ネットワーク作りが動きだしています。
妊孕性(にんようせい):妊娠する能力のこと

どこの病院でがんの治療を受けようと、生殖医療医を紹介してもらえる顔の見えるネットワークを目ざして、いま福岡も動き出しているのですね。どのように拡がっていくのでしょうか。

そのネットワークは、どのような組織ですか?どこまで進んでいるのでしょうか?

妊孕性の保持は乳がんに限ったことではなく、出産を希望するがんの女性に共通する課題です。そこで、NPO法人「日本がん・生殖医療学会(JSFP)」が設立されました。ここでは、がん患者さんの生命だけでなく妊孕性にも配慮した医療を提供するために、がん治療施設、産婦人科施設、看護師、心理士、カウンセラーなどがネットワーク作りに取り組んでいます。
われわれの指定研究でも若年乳がん患者さんの妊孕性を考慮した治療選択や、支援プログラム作成などを目ざしています。その1つとして、患者さん向けに「乳がん治療にあたり 将来の出産をご希望の患者さんへ」という冊子(外部リンク)を作成しました。ここには、乳がんの治療や生殖医療の方法だけでなく、将来の妊娠・出産を考えるにあたり、どのような情報を集めるべきかなどがまとめられています。
これまでは患者さんも医療者も情報を持っていませんでしたが、今は乳がん治療医と生殖医療医とがタッグを組んだ仕組みができつつあり、患者さんへの情報提供ができるところまで、やっとたどり着いたという状況です。
ネットワーク作りはまだ始まったばかりです。しかし、今から始めなければ何も変わりません。若年乳がん女性の希望を叶えるために、まずは、患者さんの状況を一人ひとり十分に確認して情報を積み重ねていくことが大切です。

若年乳がん女性のための情報サイトを開設し、妊娠・出産を望む方のためのネットワーク作りにも精力的に取り組まれていらっしゃる大野先生。
次回は、患者さん同士が支え合うピアサポートの大切さや、乳がん患者さんをサポートする会『ハッピーマンマ』を紹介しながら、大野先生の乳がん患者さんとの向き合い方についてお話を伺います。

次のインタビューへ 第2回 みんなに知ってほしい!サバイバーシップ支援とピアサポート
2018年12月

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