若年乳がん女性のサバイバーシップ支援とは 〜乳腺外科医からのメッセージ 独立行政法人 国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究センター長 (現:がん研有明病院 副院長 乳腺センター長) 大野 真司先生

  • 第1回 若年乳がん患者さんが抱える悩みとは?
  • 第2回 みんなに知ってほしい!サバイバーシップ支援とピアサポート
  • 第3回 ひとりじゃない!周囲のみんながあなたをサポートしてくれる
  • 第4回 今、サバイバーシップ支援に求められていること。これからの道のりは?

<下記内容はインタビュー当時の情報に基づき作成しています>

第2回公開日:2014年10月15日

みんなに知ってほしい!サバイバーシップ支援とピアサポート

第1回では、若年乳がん女性の大きなテーマである妊娠・出産をサポートするネットワーク作りが始まっているというお話を伺いました。
第2回は、社会全体で行うサバイバーシップ支援と、患者さん同士だからこそわかりあえるピアサポートについてお話を伺います。また、大野先生が長年にわたり早期発見の啓発活動や患者さんの活動を支援する『ハッピーマンマ』という組織の活動についてもご紹介いただきました。

“サバイバーシップ支援”とは具体的にどのようなことをするのでしょうか?

若年乳がん女性を支えるためには、医療者間のネットワーク作りも大切ですが、社会全体としての取り組みも実はとても大切です。“サバイバーシップ支援”とは聞き慣れない言葉かもしれませんが、がん体験者の方への社会生活における支援のことを表しています。がん診療は、ひと昔前に比べると飛躍的に進歩しています。とくに若年乳がん女性の社会生活は、治療後もまだまだ続くわけですから、社会生活を円滑に送るためのサポートが不可欠なのです。

例えば、これまではがんであることを隠して仕事を続けていた人もいたことでしょう。1/3くらいの人は職を失ってしまうという現実もあります。しかし、これからはがんであることを職場の信頼できる人に伝え、通院のために仕事を休めるような環境が望まれます。医療者ができるのは診療面でのサポートで、生活面に対してより身近な支援ができるのは、周囲の人やがんの体験者の方なのです。
『ハッピーマンマ』という組織の活動もサバイバーシップ支援を目的としています。がんを体験したことのない人が体験者をサポートするのは難しいものです。そこで、患者会のような体験者の活動を社会がサポートすることが大切です。それがサバイバーシップ支援です。

がん治療のため、通院しながら仕事をしている人は、32万人を超えているとされています(厚労省調査より)。がんになった人たちが安心して治療に取り組めて、できるだけ今まで通りの生活が送れるような社会にしていきたいですね。

“ピアサポート”とは、どんなことでしょうか?

“ピア”とは仲間という意味で、ピアサポートとは仲間同士で支え合うことです。乳がんの体験者でなければわからないことは山ほどあり、体験者だからこそわかりあえることがあります。
ピアサポートの啓発を始めるきっかけとなったエピソードを紹介します。2010年に、再発乳がん女性の2人を連れて米国臨床腫瘍学会(ASCO)に行き、米国のもっとも有名な患者団体の女性と体験者同士の座談会を行いました。日本から参加したお2人は「再発と告げられ、呆然として病院の廊下で泣いているとき、誰も救いの手を差し伸べてくれなかったことが、乳がんの告知を受けた時よりショックだった」と話しました。そして、「アメリカでは医療者がどんなサポートをしてくれるのか」と尋ねました。それに対し、米国側からは「サポートするのは医療者ではなく患者です。それは体験者の役割ですよ」と答えが返ってきました。それを聴いた2人は大きな衝撃を受けました。医療者に求めていたことが、実は自分たち体験者のなすべきことだったと気づかされたのです。

大野 真司先生

私自身もとても驚きました。実はそれがピアサポートの始まりなのです。日本にもこのような仕組みを取り入れなければと強く思いました。帰国後、すぐに各県にピアサポートを作ろうと動き出しましたが、全国に拡げるのは容易ではありません。しかし、患者さん同士が支え合うピアサポートなしに、よいケアはできないと私は考えます。ピアサポートの活動が円滑に運ぶようにするために、「若年乳がん患者のサバイバーシップ支援プログラム」のサイトの中でも啓発活動を行っています。

同じ病気だからこそわかりあえる、支い合えることがあるから、ピアサポートが必要なのですね!仲間というのは大切ですね。

『ハッピーマンマ』では、具体的にはどのような活動をされているのでしょうか?

ハッピーマンマを立ち上げたきっかけは、なかなか向上しないマンモグラフィ検診率を上げようと、早期発見を啓発することが目的でした。ところが、乳がんの患者さんは年々増える一方で、発症後につらい想いをしている患者さんやご家族の方をサポートする必要性を実感し、「乳がん早期発見のための啓発」と「乳がん患者と家族のケアおよびサポートの充実」の2本柱の活動にしました。
この10年余りに啓発のイベントなど様々な活動を行ってきています。その実績の一部をご紹介します。 (NPO法人ハッピーマンマ http://www.congre.co.jp/happymamma/

小・中学生、高校生へのがん教育

2003年にハッピーマンマを立ち上げた当初から、福岡の小・中学校のPTA(保護者)を対象に乳がん早期発見を啓発する講演を行ってきました。私は、講演会で患者さんに体験談を話してもらうようにしています。実際どのようにしこりを発見したかを体験者に話してもらう方がより伝わるからです。今では、「命の授業」として小・中学生に対してがん教育を行っています。これが子どもたちのいじめの対策にもつながっていったら良いなあと思っています。 高校生に対しては「ようこそ先輩」という企画で、医師役と患者役とで乳がんの告知をするロールプレイングや、告知を受けて帰宅した母と子どものロールプレイングを行ったりします。

専門学校生への啓発活動

福岡市の専門学校で、卒業記念に毎年生徒が行っているミュージカルを乳がんのテーマでやりたいので指導してほしいという問い合わせがあり、一緒にストーリーを作ることになりました。はじめに「乳がんとは」という講演も行った上で、生徒たちと「生きる」をテーマにミュージカルを作り上げていきました。もう5年も続いていて、若い世代やその家族の乳がんへの理解を深めています。

ウォーキングイベント

2004年から3年間ハッピーマンマ主催のウォーキングのイベントを実施しましたが、さらに広く周知していていただけるよう、福岡市とタイアップし、市民ウォークに参加しました。そのお蔭で700〜800人から4,000人規模のイベントに拡大し、活動の裾野が広がり、乳がんと関わりのない多くの市民にも啓発できるようになりました。

これまでの活動の中で、女性ばかりでなく、老若男女を問わず幅広い人たちに乳がんの早期発見を啓発できるようになりましたし、乳がん患者さんのサポートを行ってくることができました。自分たちの限られた資源の中で作れる輪は小さくても、大きな規模の団体と共同で実施すれば、波及効果を拡大することができることを実感しています。

NPO法人ハッピーマンマより(2018年10月更新)

大野先生は10年以上前から『ハッピーマンマ』を通じて、サバイバーシップ支援を続けていらっしゃいます。その具体的な支援の内容について、限られたスペースでは書ききれないくらい様々な活動の実績を伺いました。患者さんの診療でご多忙の中、様々な支援をされている大野先生の幅広いご活躍には、本当に頭が下がります。
第3回は、九州がんセンターでのチーム医療の取り組みや、大野先生が乳腺科にきてからの驚きのエピソードを伺います。

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2018年12月

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