ホーム専門医が解説する乳がん治療再発・転移の治療再発・転移とは

再発・転移の治療

2015年3月16日 公開
2023年12月 更新
監修:兵庫県立がんセンター腫瘍内科
部長(診療科長)・外来化学療法室センター長・遺伝診療科科長
松本 光史 先生

再発・転移とは

再発といわれたとき

乳がんに限らず、がんはでき始めた頃から、目に見えない小さながん細胞が血液やリンパの流れにのって身体のどこかに運ばれている可能性があります。目に見えるがんは手術で取り除くことができますが、目に見えない小さながんが、いずれ大きくなっていくのを予防するために術前・術後薬物療法を行います。しかし、その治療さえもすり抜けて、検査で確認できるほどに大きくなった状態が再発です。
主治医から再発といわれたときには、初めて乳がんと診断されたとき以上に、大きなショックを感じ、不安でいっぱいになるかもしれません。
再発してもひとりで悩まずに、医療スタッフやあなたを支えてくれる周りの人たちの力も借りて、がんとしっかり向き合うことで、ショックや不安を解消することができ、再発に対する治療に挑むことができます。

再発・転移とは

再発」とは、手術や薬物療法などの治療により、検査で確認できるがんがなくなった後、再びがんが確認できるまで大きくなることをいい、手術した側の乳房やその周囲の皮膚やリンパ節に再発したものを「局所再発」といいます。局所再発は、乳房温存術後の乳房や、乳房切除術後の胸壁やリンパ節に起こるもので、皮膚の発赤やしこりとして自覚できることもあります。
一方、はじめにできた乳房から離れた場所にがんが出てくることを「転移」または「遠隔転移」といいます。転移は、がん細胞が血液やリンパの流れにのって別の臓器に運ばれ、そこで成長したものです。乳がんの遠隔転移が起こりやすいのは、骨や肺、肝臓、脳などで、転移した部位によって、骨転移、肺転移、肝転移、脳転移と呼び、肺がんや肝がんなどとは言いません。その症状は転移部位や人によって異なり、何らかの症状を感じる場合もありますし、まったく自覚症状のない場合もあります。

局所再発 遠隔転移

手術後の検査について

手術後にどのような検査をどれくらいの頻度で行うとよいのかについては、様々な調査研究が行われています。乳がんは手術後2~3年以内に再発する場合が多いので、手術後3年以内は3~6ヵ月毎に受診し、問診や視触診を行うことが勧められます。何らかの訴えや異状を認めた場合には、それに応じた検査を行います。4~5年目は6~12ヵ月毎、5年以降は年1回と、受診の間隔を延ばしていきますが、10年後や20年後に再発することもありますので、注意深く経過を観察していきます。並行して、局所再発や反対側の乳がんを早く見つけるために、年に1回のマンモグラフィ検査が行われます。この検査は年齢にかかわらず行っている医療機関が多いようです。

手術後の検査

監修者略歴

兵庫県立がんセンター腫瘍内科
部長(診療科長)・外来化学療法室センター長・遺伝診療科科長
松本 光史(まつもと こうじ)先生

  • 1999年京都府立医科大学卒業
  • 1999年同大学第一内科にて初期研修
  • 2001年国立がんセンター中央病院にて内科レジデント
  • 2004年同病院乳腺・腫瘍内科にてがん専門修練医
  • 2006年兵庫県立がんセンター腫瘍内科医長兼外来化学療法室副室長
  • 2011年同腫瘍内科医長兼外来化学療法室室長
  • 2013年同腫瘍内科科長兼外来化学療法室室長
  • 2017年同腫瘍内科医長兼外来化学療法室センター長
  • 2019年同腫瘍内科部長(診療科長)兼外来化学療法室センター長
  • 2021年同腫瘍内科部長(診療科長)兼外来化学療法室センター長
    兼遺伝診療科科長
  • 【専門医】
  • 日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医
  • 日本乳癌学会乳腺専門医・指導医
  • 日本内科学会認定総合内科専門医・認定医
  • 日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医
  • 日本遺伝性腫瘍学会遺伝性腫瘍専門医
  • 【学会】
  • 日本臨床腫瘍学会、日本乳癌学会、
    日本がんサポーティブケア学会、日本人類遺伝学会、
    日本家族性腫瘍学会、日本婦人科腫瘍学会、
    日本サルコーマ治療研究学会、日本内科学会、
    ASCO、ESMO