再発・転移に対する薬物療法監修: 兵庫県立がんセンター腫瘍内科 医長 外来化学療法室 センター長 松本 光史先生

  • 再発・転移とは
  • 再発・転移乳がん治療の考え方
  • 転移部位別の治療法
公開日:2015年3月16日

再発・転移乳がん治療の考え方

再発の治療は、局所再発と遠隔転移とでは大きく異なります。
局所再発の場合は、初発の乳がんと同様に、早期に発見できれば治癒を目指すことが可能です。通常は再度手術でがんを取り除いた後、必要に応じて薬物療法や放射線療法を行います。
遠隔転移の場合は、がんの進行を抑えたり、つらい症状を和らげたりして、QOL(生活の質)を保つことを重視して、「乳がんとの上手な共存」を目標とする治療を行っていきます。

局所再発の治療の考え方

温存乳房内再発

乳房温存術を行った後、残った乳房に再発することを「温存乳房内再発」といいます。乳房温存術後は、通常再発予防のために放射線療法を行いますが、10年間で7%前後に再発がみられます。温存乳房内再発は、定期的な検査でみつかる場合や自己検診でしこりが見つかる場合があります。
治療は、マンモグラフィや超音波、MRIなどの画像検査を行い、乳がんの広がりを診断した上で、乳房切除術によって残した乳房全体を切除するのが標準的な治療です。

乳房切除術後の胸壁およびリンパ節再発

乳房切除術後に、その周囲の皮膚、胸壁やリンパ節に再発することがあり、しこりとして感じたり、湿疹や虫刺されのような症状で見つかります。そのしこりが、部分的な乳がんの再発なのか、遠隔転移とともに起こっているのかによって、治療方法が異なります。遠隔転移を伴う場合には、遠隔転移の治療の考え方に従います。
胸壁やリンパ節だけに再発した場合も、基本的にはまず薬物療法を行います。センチネルリンパ節生検後に郭清を行わなかった腋窩リンパ節や、全身麻酔が不要な胸壁再発には局所再発による切除が行われることもあります。必要に応じて放射線治療が行われることもあります。

遠隔転移の治療の考え方

遠隔転移では、検査で見つかった場所以外にも、血液やリンパの流れにのって目に見えないがん細胞が身体のどこかに潜んでいる可能性を考えて、治療する必要があります。そのため、全身療法である薬物療法を行うのが基本です。
具体的には、①ホルモン受容体感受性と閉経の状況、②HER2の発現状況、③転移の場所やその広がり具合、④再発までの期間、⑤術後薬物療法としてどの薬を使用したか、⑥現時点での症状の有無、⑦患者さんの希望、などを総合的に考慮した上で選択します。
骨転移のある場合には、ビスホスホネート製剤など骨転移の症状や進行を抑える薬を追加します。
ホルモン受容体陽性の場合は、症状のある内臓転移がなければ、閉経状況に応じたホルモン療法を優先します。症状のある内臓転移を伴う場合には抗がん薬(抗がん剤)の使用を検討します。
HER2陽性であれば抗HER2薬(分子標的治療薬)を使用します。HER2陰性のトリプルネガティブであれば、化学療法を行います。その場合、基本的には抗がん剤は併用せず、単独で使用します。ただし、骨転移のみの場合や症状のある内臓転移がない場合には、QOLを保つことを重視して、ホルモン療法を検討する場合もあります。
乳がんの治療薬には多くの選択肢がありますので、1つの治療法を行い、効果がなくなったら、別の治療法に切り替えるという方法で進めていきます。また、痛みやつらい症状を和らげる緩和ケアも並行して行います。

遠隔転移の治療の大まかな流れ

再発・転移とは転移部位別の治療法

監修者略歴

兵庫県立がんセンター腫瘍内科 医長 外来化学療法室 センター長 松本 光史先生

  • 1999年京都府立医科大学卒業
  • 1999年同大学第一内科にて初期研修
  • 2001年国立がんセンター中央病院にて内科レジデント
  • 2004年同病院乳腺・腫瘍内科にてがん専門修練医
  • 2006年兵庫県立がんセンター腫瘍内科医長兼外来化学療法室副室長
  • 2011年同腫瘍内科医長兼外来化学療法室室長
  • 2013年同腫瘍内科科長兼外来化学療法室室長
  • 2017年同腫瘍内科医長兼外来化学療法室センター長

【専門医】
日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医
日本乳癌学会乳腺専門医
日本内科学会認定総合内科専門医・認定医
日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医

【学会】
日本臨床腫瘍学会、日本乳癌学会、
日本がんサポーティブケア学会、日本人類遺伝学会、
日本家族性腫瘍学会、日本婦人科腫瘍学会、
日本サルコーマ治療研究学会、日本内科学会、ASCO、
ESMO

2019年1月

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