手術療法監修:岡山大学病院 乳腺内分泌外科助教 枝園忠彦先生

  • 手術療法を受ける前に
  • 手術療法の実際
  • 乳房再建術
  • 術後のケア・リハビリテーション
公開日:2014年1月30日

手術療法の実際

乳房温存術(部分切除術)

乳房温存術とは、乳房を部分的に切除し、がんを取り除く方法です。乳房をすべて取り除くのではなく、乳がんとその周囲の乳腺組織を切除し、それ以外の正常な乳房を温存します。

温存術の長所は「自分の乳房が残せる」という点です。一般に乳房が全てなくなってしまう全摘術と比較して、温存術は自分の乳房が残りますので術後の美容的な側面に優れます。ただし、患者さんによってがんのある場所や範囲が異なることから、切開する場所や大きさ、術後の乳房の変形の程度はかなり個人差があります。術後の乳房がどういった形になるか、手術前に主治医と相談しておくことをお勧めします。

短所として、温存した正常乳腺内に再びがんができる「局所再発(乳房内再発)」の危険性があります。乳房内再発した場合は、再手術などが必要になることもあります。これを防ぐために、現時点では残した乳房へ術後放射線治療を行うことが強く推奨されます。適切な放射線治療を受ければ、全摘術と同様に局所再発を防げることが明らかにされています。

乳房温存手術の種類

乳房切除術(全摘術)

乳房切除術とは、皮膚・乳頭・乳輪を含めてすべての乳房を切除する方法です。乳房周囲の大胸筋や小胸筋といった組織は切除すると、術後手の動きが悪くなるなど日常生活に影響がでることがあるため、通常は切除しません。乳房切除術の長所は温存術と比べて、術後の放射線治療を行わなくてよいことですが、短所として術後の美容的な側面は乳房温存術と比べて劣ると言わざるを得ません。

近年、この美容的な短所を補うために、乳房切除後に乳房再建術を行うことが可能となってきました。その方法は後に述べますが、乳房再建術を行う場合は通常の乳房切除と切開する場所や方法が異なる場合があります。可能な限り皮膚を残す皮下乳腺全摘術や、皮膚だけでなく乳頭も温存する乳頭乳輪温存皮下乳腺全摘術(乳頭にがんがない場合に限られます)などです。

腫瘍が非常に大きい場合、皮膚や大胸筋へがんが広がっている場合、リンパ節転移が認められる場合などは全摘術でも術後に放射線治療が推奨されます。

センチネルリンパ節生検

乳がんは血液の流れやリンパの流れにのって全身に転移することがわかっています。真っ先に転移しやすいのは、わきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)で、ここに転移があったかどうかが、将来、他の臓器に遠隔転移するかどうかの指標のひとつになります。

センチネルリンパ節とは「見張りリンパ節」ともいい、腋窩リンパ節の中で最初にがん細胞がたどり着くと考えられるリンパ節のことです。センチネルリンパ節生検は、乳房の手術の際、しこりの周りや乳輪に微量の放射性同位元素あるいは色素を注射して、センチネルリンパ節を見つけ出します。センチネルリンパ節にがん細胞がなければ、それ以外のリンパ節にも転移がないと判断できるため、腋窩リンパ節郭清を省略することが可能です。

腋窩リンパ節郭清 えきかりんぱせつかくせい

術前の検査で腋窩(わき)のリンパ節に転移が認められた場合や、センチネルリンパ節生検で転移が明らかとなった場合、腋窩リンパ節郭清(がんの転移がみられるわきの下のリンパ節を切除すること)が行われます。

腋窩リンパ節郭清の切除範囲は、もっとも転移しやすいレベルⅠから、大胸筋と小胸筋の間までのレベルⅡ、小胸筋の後ろまでのレベルⅢの3段階に分けられます(図)。転移リンパ節の個数は、多いほど再発する可能性が高くなるため、術後の補助療法の治療方針を決める上でも、重要な情報となります。
腋窩リンパ節郭清を行った場合、手術した乳房側の腕のむくみ(リンパ浮腫)が起こることがあります。それを防ぐために後に述べる術後のケアが推奨されます。

近年の臨床試験の結果では、もともとのがんが比較的小さく、乳房温存術の後に放射線治療を行う場合は、センチネルリンパ節に転移があっても、追加のリンパ節郭清を行わなくても予後には差がないという報告も出てきています。病状に合わせた判断が必要になりますので、この点も主治医とよく相談することをお勧めします。

今後期待される治療法

乳がんを切除せずに治療することで、身体への負担をより少なくする乳がん焼灼術がいくつか試みられています。これらの方法はまだ試験段階で、保険診療の対象にもなっていません。施行できる施設も少ないため、治療を希望する場合には、主治医によくご相談ください。

FUS(MRガイド下集束超音波手術) MRI検査でがんの部分を狙って、超音波のエネルギーを集中させ、がんを焼ききる方法 ラジオ波熱凝固療法 がんに針を刺し、その先端からラジオ波を出してがんを死滅させる方法

手術療法を受ける前に乳房再建術術後のケア・リハビリテーション

監修者略歴

岡山大学病院 乳腺内分泌外科助教 枝園忠彦先生

1999年 香川大学医学部卒業
1999年 岡山大学医学部 腫瘍・胸部外科(第2外科)入局
2003年 国立がんセンター中央病院 外科レジデント
2005年 岡山大学医学部大学院(外科学)卒業
2006年 国立がんセンター中央病院 がん専門修練医
2008年 岡山大学病院 乳腺内分泌外科 助教
2008年 第14回 日本乳癌学会研究奨励賞受賞
2009年 第3回 「乳癌の臨床」賞 奨励賞受賞

【資格】
医学博士
日本外科学会:認定医,専門医 指導医
日本乳癌学会:認定医,専門医 評議員
マンモグラフィー読影認定医
がん治療認定医

【学会】
日本乳癌学会 日本外科学会 乳がん検診学会 日本乳腺甲状腺超音波医学会
日本がん治療学会 臨床腫瘍学会 日本甲状腺外科学会 日本内分泌外科学会
日本臨床外科学会 日本人類遺伝学会
米国腫瘍学会(ASCO) ヨーロッパ外科学会(ESSO) 万国外科学会(ISS)

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