ホーム乳がんの早期発見ブレスト・アウェアネスの実践を

乳がんの早期発見

2019年1月 公開
2023年12月 更新
監修:東北医科薬科大学
乳腺・内分泌外科 教授
鈴木 昭彦 先生

ブレスト・アウェアネスの
実践を

乳がん検診の効果と限界

マンモグラフィによる乳がん検診は、乳がんでの死亡率を減少させることが証明されている検診ですが、全ての乳がんを発見できる検診というわけではありません。現在の医療技術では100%の乳がんを検診で発見することは困難なのです。更に、検診のときには異常を指摘できなくても急激に増大する乳がんなども存在します。検診を受けて早期発見に務めることは大切ですが、検診の結果に慢心せずに、自分でチェックする習慣を身につけることも重要なのです。

ブレスト・アウェアネスとは

そこで実践したいのが「ブレスト・アウェアネス」です。ブレスト(breast)は「乳房」、アウェアネス(awareness)は「意識」を意味する言葉で、「乳房を意識した生活習慣」が「ブレスト・アウェアネス」の内容です。具体的には日頃の生活の中の4つのポイントで構成されます。

ブレスト・アウェアネスの4つのポイント

1自分の乳房の状態を知る。

日常生活の中で自身の乳房の大きさ、硬さ、月経の周期に連動した変化などに気をつけ、通常の状態を理解し覚えることが第一歩です。

2乳房の変化に気を付ける。

異常を探すという意識よりも、今までの生活では記憶にない変化を感じる、変化に気づくことが重要です。乳房の変化として注目してほしいポイントとして腫瘤(しこり)、血性乳頭分泌、乳頭乳輪部のびらん、皮膚陥凹などがあります。

腫瘤
(しこり)

皮膚陥凹
(くぼみ)

乳頭乳輪部のびらん
(ただれ)

血性乳頭分泌
(乳頭からの分泌物)

3変化に気付いたらすぐに医師に相談する。

変化に気付いたら次回の検診を待ったり、自己判断で先延ばしせずに医療機関を受診することが重要です。この早期受診行動は乳がん検診の偽陰性対策に留まらず、若年発症の乳腺疾患において遅滞なく診断・治療につなげる意味においても非常に重要な項目です。

440歳になったら2年に1回乳がん検診を受ける。

科学的根拠のある乳がん検診(マンモグラフィ)を受けること、2年に1回の受診間隔を守ることも大切です。更に検診で異常を指摘された際には確実に精密検査を受けることも重要です。

自己触診との違いは?

自己触診は自分で行う診察行為という位置づけがあり、異常を探すことや腫瘤(しこり)を見つけることに主眼が置かれます。そのため手技や所見の教育が必要で、継続できずにやめてしまったという話もよく聞きます。これに対してブレスト・アウェアネスはあくまで「生活習慣」と位置づけられ、何らかの変化の有無に気をつけることは日常生活の中でも継続できると考えます。
 ブレスト・アウェアネス(乳房を意識する生活習慣)を実践することで乳がん検診をすり抜ける乳がんにも早期で対応できることが期待されます。日頃から自分の乳房を意識する習慣を身に着けていただくことが大切です。

監修者略歴

東北医科薬科大学
乳腺・内分泌外科 教授
鈴木 昭彦(すずき あきひこ)先生

  • 1992年東北大学医学部卒業
  • 1992年〜1995年福島市大原総合病院にて外科研修
  • 1995年東北大学医学部 第2外科入局
  • 2000年東北大学大学院医学系研究科 卒業(医学博士)
  • 2000年~2003年米国コロンビア大学留学(病理学 Fellow)
  • 2003年 5月東北大学大学院医学系研究科腫瘍外科 医員
  • 2003年10月東北大学大学院医学系研究科腫瘍外科
    (乳腺・内分泌外科)助手
  • 2008年 4月同 講師
  • 2009年 4月八戸市立市民病院 乳腺外科部長
  • 2011年 4月東北大学病院乳腺内分泌外科 講師
  • 2013年 7月東北大学大学院 先端画像・
    ナノ医科学寄附講座 准教授
  • 2017年 4月東北医科薬科大学 乳腺・内分泌外科 教授
  • 【資格・所属学会など】
  • 日本外科学会専門医
  • 日本乳癌学会専門医
  • 日本乳癌検診学会評議員