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外来化学療法とは

2014年4月25日 公開
2023年12月 更新
監修:星薬科大学
実務教育研究部門 教授
佐野 元彦 先生

外来化学療法とは

病院に通いながら行う抗がん薬(抗がん剤)治療を外来化学療法といいます。近年、抗がん剤治療だけでなく、抗がん剤の副作用を緩和するための治療(支持療法)も進歩し、入院せずに日常生活を維持しながら抗がん剤治療を続けられるケースも増えてきました。
ここでは、多様に進化している乳がんの外来化学療法を受ける際に必要な情報を解説します。

普段の生活を維持しつつ乳がんの治療も受けられる

外来化学療法は入院治療と異なり、抗がん剤の点滴や放射線照射などを外来で行った後、自宅で過ごすことができる治療です。全身状態が良好な場合、通院可能な方で、治療や検査がスケジュール通りに行える環境であれば、外来化学療法が可能です。また、乳がんでよく使われる抗がん剤治療は、数日間にわたる治療や長時間拘束される点滴がないため、外来化学療法が行いやすいといえます。そのため、普段の生活スタイルや生活の質(Quality of life:QOL)を維持した自分らしい生活を送ることができます。

通常、初回治療(1コース目)は、患者さんの様子を見ながら重い副作用が発現したときにすぐに対応できるよう入院して行います。初回治療で大きな問題がなければ、その後の治療も比較的安心して行えると考え、2回目(2コース目)以降は外来通院で治療を行います。使用する薬剤の種類や患者さんの状況によっては、初回治療から入院せずに外来化学療法を行う場合もありますので、主治医とよく相談してみましょう。

どんなところで治療を受けるの?

外来化学療法を専門に行うための部屋(外来化学療法室)を設けている病院が多くなり、病院ごとに患者さんがリラックスして安全に治療を行えるように、様々な工夫を行っています。外来化学療法室には、リクライニングチェアーやベッドがあり、医師や看護師が抗がん剤などの投与を行います。

担当の看護師が見守ってくれているので、安心して抗がん剤の投与を受けられます。点滴中にわからないことや困ったことがあったら、遠慮なくそばにいる看護師や薬剤師などに尋ねてみるとよいでしょう。

外来化学療法の流れ

オリエンテーション

通常、治療を開始する前に、患者さんやご家族に外来化学療法をご理解いただくためのオリエンテーションが行われます。治療の目的やスケジュール、外来での所要時間、起こりうる副作用や対策、また、緊急に連絡が必要な症状と連絡方法、治療費などについて事前に説明されます。施設によっては、通院での初回治療前に外来化学療法室の見学もできます。

体調のチェック(採血・問診・診察)

外来化学療法を受ける当日は、その日の体調をチェックし、抗がん剤を投与しても問題ないかを確認します。そのため、まず来院したら採血を行います。採血した血液からは、ご本人では自覚しにくい血液成分の状態や栄養状態などを知ることができます。その結果が出るまでに施設によって差はありますが、約30分~1時間程度を要します。

次に、採血の結果が出るまでの時間を利用して看護師や薬剤師が問診(日常生活の様子や体調の聞き取り)を行います。問診では、体重、血圧、体温などの測定のほか、前回の投与日からご自宅でどのような体調の変化があったのか、薬はしっかり飲めていたかなどを確認します。

その後、主治医による診察を受けます。主治医は採血、問診、その他検査の結果を合わせて、抗がん剤投与を行っても問題がないか判断します。

抗がん剤の投与

投与を行っても大丈夫であると判断された場合に、はじめて抗がん剤の投与が可能となります。抗がん剤の投与によって嘔吐やアレルギーなどの副作用が出ることが予想される場合には、支持療法として、抗がん剤投与の前に予防的な薬の投与を行います。

抗がん剤の投与中は、アレルギー反応や血管の外への抗がん剤の漏れが起こる場合に備え、薬剤師や看護師が定期的に様子を見てまわりますから、気になることや前回投与時と違う症状や感覚などがある場合には、遠慮せずに伝えるようにしましょう。

投与後の体調確認

投与を終了し点滴を外した後も、副作用が出ないかどうかを見守ります。過去数回の投与で何も症状が出なかった場合でも急に症状が出ることがあるため、投与後しばらくはそのまま安静にし、気分が悪くなったり、体調が悪くなったりしないかどうかを確認した上で帰宅します。

帰宅

とくに問題がなければ、帰宅後は普段の生活を続け、次の外来通院まで自宅で過ごします。自宅で普段と異なる症状(高熱や呼吸困難など)が継続したり、急激に悪化する場合は至急病院に連絡することも必要です。1回の外来通院には時間がかかるかもしれませんが、安全に投与できたかどうかを医療者が詳細に把握すること、患者さんがご自身の状態を常に把握しておくことは、安心して外来治療に取り組むために大切なことなのです。

監修者略歴

星薬科大学
実務教育研究部門 教授
佐野 元彦(さの もとひこ)先生

  • 2001年城西大学薬学研究科薬学専攻(博士後期課程)修了
  • 2004年埼玉県立がんセンター薬剤部入職
  • 2006年埼玉医科大学総合医療センター薬剤部入職
  • 2006年 9月~12月国立がんセンター中央病院にて研修
  • 2006年埼玉医科大学総合医療センター外来化学療法センター薬剤師,緩和ケアチーム薬剤師を兼任
  • 2020年5月-現在星薬科大学 実務教育研究部門 教授
  • 【学位、認定など】
  • 博士(薬学)
  • 日本医療薬学会 がん専門薬剤師
  • 日本医療薬学会 がん指導薬剤師
  • 日本緩和医療薬学会 緩和薬物療法認定薬剤師
  • 日本静脈経腸栄養学会 栄養サポートチーム専門療養士
  • 日本緩和医療薬学会 緩和医療暫定指導薬剤師
  • 日本遺伝性腫瘍学会 遺伝性腫瘍コーディネーター
  • 【所属学会など】
  • 日本薬学会,日本医療薬学会,日本緩和医療薬学会,日本臨床腫瘍薬学会,日本癌治療学会,日本臨床腫瘍学会,日本癌学会,日本家族性腫瘍学会,日本緩和医療学会
  • 日本がんサポーティブケア学会,特定非営利活動法人 がん医療研修機構
  • Symptom Control Research Group:SCORE-G
  • Society of Oncological Pharmacotherapy:SSOP