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乳がんで苦しむ人をなくしたい
~埼玉乳がんケア・サポートグループの取り組み~

NPO法人 埼玉乳がんケア・サポートグループ 理事長
(さいたま赤十字病院乳腺外科部長) 齊藤 毅 先生

 NPO法人埼玉乳がんケア・サポートグループは乳腺疾患を専門とする医師がまだ少なかった1999年、近隣施設の医師が集うささやかな勉強会からスタートしました。当初は研究・学術的活動が中心でしたが、2019年10月からは、社会的活動を中心にするとともに名称変更し、現在では県内39の病医院から70名の医師が参加しています。グループでは発足当初から「県内から乳がんで苦しむ人をなくす」ことを理念に揚げ、現在では標準治療の均てん化を軸とした医療従事者の人材教育・育成、一般市民に向けた啓発を中心に活動を続けています。今回は3代目の理事長を務めておられる、さいたま赤十字病院 乳腺外科部長 齊藤毅先生にお話をうかがいました。

取材日:2021年7月
公開日:2022年2月8日

グループの変遷と理念に込めた思い

 当グループは、医師のみが参加する勉強会から、放射線技師、薬剤師、看護師など多職種が関わる組織となり、患者さんの日常生活を維持するための、チームとしての医療介入の在り方を強く意識するようになりました。

 医師の限られた診察時間において会話が一方的になる傾向があるという問題点、放射線技師が撮影する際の痛みや不安を軽減させる大切さ、看護師やカウンセラーが接する際のゆったりとした環境整備の必要性、服薬アドヒアランスの維持に薬剤師が介入する重要性などに着目し、医療チームをどのように構成し活動すべきかを話し合っています。

 現在の乳がん治療は、従来からの中心的な治療である外科的切除のほかに、乳がんの様々な個性に対応した薬物療法も中心となりつつあります。また最近ではがんの発生や増殖過程の根源には遺伝子の変異が関わっていることが明らかになり、個々の患者さんのがん遺伝子の特徴を調べ、それに合った薬剤を探す試みのがん遺伝子パネル検査も始まりました。どの地域にお住まいになっていてもすべての患者さんが検査や治療を受ける機会が得られるように、グループ内での連携を模索しており調整を急いでいます。

 「乳がんで苦しむ人をなくす」という理念は、病医院の連携をベースとする対応を意識した柔軟性・機動力のある地域のチーム医療の構成へと展開しています。

  • *服薬方法や薬の種類について患者さんが十分に理解し、納得した上で実施、継続すること

ホ ームページには、グループの理念が参加メンバーの願いとして掲示されています。

患者さんに寄り添うことを目指した活動

 当グループでは市民向けのフォーラムを年に一度行っています。実施後にはアンケートをとり、参加者の声をふまえて次の講演のテーマや内容を決めています。アンケートの評価が高かったものとして、精神腫瘍科の医師による患者さんやご家族のこころのサポートに関する講演があります。また、治療による脱毛や皮膚障害などの外見変化にも、参加者の高い関心が示されました。

 乳がん検診、マンモグラフィなどの診断技術の変化、続々と開発される薬剤、手術治療に関する基本的情報提供以外にも、闘病中の患者さんおよび取り巻くご家族の方々が高い満足度・幸福感を維持できるよう、日常生活に密着した問題を解決する必要性を感じています。

臨床における活動のメリットと今後の課題

 埼玉乳がんケア・サポートグループでの活動が臨床で役立つ例として、新しい分子標的の薬剤や免疫チェックポイント阻害剤が登場した場合に、他施設での先行使用事例や副作用への対応法など、実際の経験に基づく情報を得られることがあげられます。最近では、新型コロナワクチン接種後に起こる腋の下のリンパ節の腫れという副反応1)が意外に多いことを知り、乳がんとの関連を過度に疑って不要な検査をしてしまうことを避けることができました。日頃の臨床に必要な最新の情報をリアルタイムで共有し、直ちに患者さんに還元できることは大きなメリットです。

 今後の課題として、情報発信の方法があげられます。市民フォーラムのアンケートでも、私どものグループの集会でも、リモートでご自宅や職場から参加できる環境への要望が寄せられました。例えば市民フォーラムは会場とwebのハイブリット開催を中心にしたり、 乳がん検診の啓発をインターネット社会に合わせた方法で行ったりする必要性を感じています。少しずつ形を変えて工夫をしながら、必要な情報を市民のみなさまや患者さんに届けられるように努めていきたいと思います。いずれは、患者さんの代表者を会議のメンバーに含め、医療の問題点の総体を把握できる方向性への展開を考えております。

  • 1)厚生労働省:新型コロナワクチンQ&A

患者さん、ご家族へのメッセージ

 近年の乳がん治療の進歩に伴い、治療方法は変化してきています。そのような状況の中で個別化されつつあるあなたの・・・・乳がんに対する医療情報を知ることは、余計な治療の回避やバランスの良い効果的な治療を受けるためには、とても大切なことです。そして、必要な情報にアクセスするための窓口の一つとして、私たちのグループがあることをぜひ知っていただきたいと思っています。

 グループの活動のなかでは、「ただ長生きするのではなく、副作用をうまくコントロールしながら安心した気持ちで治療を続けたい」という患者さんからの声を耳にすることがよくあります。私たちはこのような希望を叶えるためにも、どこの病院でも安心して治療を受けられることを目指して活動を続けていきます。それぞれの患者さんの背景と生活の中で幸せに暮らしながら治療を続ける方法を、一緒に考えていきましょう。

埼玉乳がんケア・サポートグループの皆さま

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