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乳がん患者さんを支える
チーム医療

金沢大学附属病院 乳腺外科 診療科長 
石川 聡子 先生

 金沢大学附属病院は、北陸全域の医療拠点として高度先進医療を遂行し、地域医療にも貢献する特定機能病院です。乳腺外科ではひと月あたり約500人の乳がん患者さんが治療を継続しており、チーム一丸となってひとりひとりに最善の治療を提供するため尽力しています。今回は、乳腺外科診療科長の石川聡子先生にお話をうかがいました。

取材日:2021年2月
公開日:2022年3月28日

乳がん患者さんの自分らしい生活をサポート

 乳がん治療チームは、医師、看護師、薬剤師、理学療法士など様々な職種のメンバーで構成されます。チームで協力して乳がん患者さんが自分らしく生活するためのサポートを行い、気軽に相談できる窓口としての役割を担います。患者さんが、治療だけでなく就労などについて悩むような場合にも、情報共有をしながらチームメンバーそれぞれの専門知識を活かし、多方面から患者さんを支えます。
 チームでの活動においては、各メンバーが各部署での経験を活かして乳がん診療のサポートを行います。サポート体制の例として、図のような連携を挙げることができます。また、メンバーが継続してサポートを行うことで、患者さんが気軽に相談できたり、コミュニケーションを深めやすくなったりするメリットもあります。

院外薬局との連携もスタート

 院外も含めたチーム医療として、2021年2月より石川県内で統一したトレーシングレポート(服薬情報提供書)が導入されました。まずは経口分子標的薬や経口抗がん薬を対象として始まっています。このシステムでは、投与後の副作用が出現し始める時期に、院外薬局の薬剤師が患者さんへ電話で問診と状況確認を行います。その結果はトレーシングレポートを用いて院内の薬剤師や主治医に共有され、必要に応じて患者さんに来院を促したり、支持療法が検討されたりすることがあります。
 県内には500を超える院外薬局があります。よりわかりやすいシステムを全体で実践していくために、導入にあたって県内の乳がん診療を行う主幹病院が連携し、統一した書式のトレーシングレポートを作成しました。このシステムにより、経口分子標的薬や経口抗がん薬が処方された際、副作用が重篤化する前に発見し適切に治療することが可能になり、より安全で長期的な服薬につなげることができます。病院内にとどまらず、多職種・多施設に連携を広げることで、今後さらに乳がん患者さんの療養に関するサポートが向上していくと感じています。

乳腺領域における個別化医療(がんゲノム医療)

 乳腺領域においても他のがん同様に、個別化医療としてがんゲノム医療の導入が進んでいます。現在、術後の化学療法の上乗せ効果を評価するための遺伝子検査、進行再発患者さんに対する遺伝子パネル検査などが実施されています。これらを実践するうえでは、腫瘍組織の取り扱いが重要です。後々患者さんが遺伝子検査を受けられる可能性をより確実にするために、摘出した腫瘍組織を手術室ですぐに処理するシステムの構築・実践が行われています。
 2020年4月には遺伝性乳がん卵巣がん症候群の検査や予防的手術が保険適用となりました。そのことを受け、希望する患者さんが検査や手術を受けられるシステムの構築が必要となります。また、患者さんの知る権利を尊重し、情報を広くお伝えすることは、患者さんの治療選択のうえで重要です。そのことを念頭に、新たに保険適用の対象となった患者さんには一斉に書面でお知らせするなど、日々の情報提供や説明を行います。

患者さん、ご家族へのメッセージ

 私は、乳がん治療を長く続けるためには、なるべく自分らしい生活を変わらず過ごすことが大切だと思っています。例えば、仕事を辞めないといけない、と一人で悩んでいる患者さんもいらっしゃるかもしれません。しかし現在は通院で治療できる場合が多く、がん薬物療法に対する支持療法も進歩しているため、通院しながら仕事を続けている患者さんは多くいらっしゃいます。自分らしく治療を続けるために、周りの医療スタッフや職場の人に一度相談してみてはいかがでしょうか。
 私たちは、患者さんが悩み、迷うとき、必ず力になれるよういつでも準備をしています。あなたにとってベストな治療や環境を一緒にみつけて、あなたらしい乳がん治療を続けていきましょう。

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