ホーム薬剤師によるお薬の解説薬剤師のかかわりがんの治療と薬剤師

薬剤師のかかわり

2014年2月25日 公開
2023年12月 更新
監修:東京薬科大学
臨床薬理学教室 教授
鈴木 賢一 先生

がんの治療と薬剤師

乳がんをはじめ、がんの治療では、様々な職種の医療従事者が協力して治療を行う「チーム医療」が拡がりつつあります。患者さんを中心として、医師はもちろん、看護師、栄養士、薬剤師などのスタッフの力を集結して治療をサポートしています。その中で、患者さんが安心して薬物療法を受けられるように、薬剤師は薬の専門家として患者さんをサポートする役割を担っています。

“レジメン”とは料理に例えればレシピ

レジメンとは、料理でいうところのレシピにあたり、抗がん薬などの薬剤がそれぞれの食材ということになります。
がんの薬物療法は、抗がん薬の投与量や投与方法が複雑で、さらに、副作用の予防あるいは軽減するための薬剤(支持療法薬)なども組み合わせる必要があることから、一人の患者さんに投与する薬剤が多岐にわたることも少なくありません。

そこで、抗がん薬、輸液、支持療法薬など、それぞれの投与量や期間、手順などを示す「レジメン」と呼ばれる治療計画書によって治療を行います。どのような抗がん薬をどのくらいの量や間隔で投与するのか、あるいは、一緒に投与する輸液の量や支持療法薬の種類をどうするのかなどの細かい計画が、標準的な治療に沿った形でそれぞれの病院ごとに決められています。

薬あるところに薬剤師あり

がんそのものの薬物療法だけでなく、合併症の治療や痛みをとるための緩和医療まで、薬を使うところはどこでも薬剤師の出番です。では実際に、病院の薬剤師はどのような役割を担っているのでしょうか。がん治療における主な4つの仕事をご紹介します。

1. レジメンを管理する

乳がんをはじめとしたがんの薬物療法は、新しい抗がん薬や支持療法薬の開発、また、より適切な投与方法などについて日々研究が行われ、進歩しています。そのため、チーム医療の中で国内外から入手した新しい情報を共有し、有効性や安全性について評価しています。
薬の専門家である薬剤師はその中心となり、新たに評価されたレジメンやこれまでの既存のレジメンを管理するとともに、実際に投与されるレジメンがその患者さんにとって適切かどうかもチェックしています。

2. 抗がん薬投与中、および投与後の安全性を管理する

薬剤師は、抗がん薬投与後の副作用の状況を確認したり、副作用対策のための薬剤は必要ないかどうか、あるいは抗がん薬の量を減らす必要があるかどうかなどをチェックします。必要があれば、具体的な処方例を提示し、担当医と相談して、一人ひとりの患者さんにより適した治療が行われるようアドバイスします。

3. 服薬をサポートする

薬物療法についてわかりやすく患者さんに説明することも、薬剤師の大切な仕事の一つです。
抗がん薬を投与されることに不安を感じることもあるでしょう。使用する抗がん薬はどのような働きをするのか、また、どんな副作用が起こりやすいか、副作用が出たときにはどうしたらよいかなど、担当医から説明を受けても一度で理解するのはなかなか難しいものです。
いつ気をつけたらよいか、また、いつなら体調が落ち着いているかなど、具体的な説明を受けることで、治療中の日常生活をより具体的にイメージすることができます。

4. 抗がん薬を調製する

患者さんに投与される抗がん薬は正確な量で、なおかつ清潔に調製される必要があります。そのため、複数の薬剤師が投与量を厳密にチェックしたり、「無菌操作」という特殊で清潔な方法により、調製を行っています。
患者さんの目には見えない部分ですが、いくつもの重要なチェックがなされて、ようやく患者さんのベッドサイドに届けられます。

監修者略歴

東京薬科大学
臨床薬理学教室 教授
鈴木 賢一(すずき けんいち)先生

  • 1992年3月明治薬科大学薬学部衛生薬学科 卒業
  • 1993年4月沼津市立病院 薬剤部
  • 2006年4月静岡県立静岡がんセンター 薬剤部 主任
  • 2012年4月がん研有明病院 薬剤部 副薬剤部長
  • 2018年4月昭和大学薬学部 非常勤講師 併任
  • 2020年5月星薬科大学 臨床教育研究学域
    実務教育研修部門 教授
  • 2023年1月東京薬科大学 臨床薬理学教室 教授
  • 【所属学会など】
  • 日本臨床腫瘍薬学会:副理事長
  • 日本臨床腫瘍学会:評議員
  • 日本肺癌学会
  • 日本がんサポーティブケア学会
  • 日本癌治療学会
  • 日本臨床薬理学会
  • 【認定など】
  • 日本医療薬学会認定がん指導薬剤師
  • 日本医療薬学会指導薬剤師