HOMEHOPEFUL GARDEN中部国際医療センター 乳腺外科 部長/乳がん治療・乳房再建センター長 竹内 賢 先生
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患者さんの気持ちに寄り添う
乳がん治療

中部国際医療センター 乳腺外科 部長/
乳がん治療・乳房再建センター長 竹内 賢 先生

 中部国際医療センターの前身である木沢記念病院は、「病める人の立場に立った医療、新しい医療サービスの提供」を理念に掲げ、地域医療支援病院として診療を行ってきました。2008年に地域がん診療連携拠点病院に指定され、2017年に岐阜県下初となるがんゲノム診断・治療センターを設置、2018年にはがんゲノム医療連携病院にも指定されました。木沢記念病院は、2022年1月に中部国際医療センターへ名称変更し、引き続き地域の医療拠点としての役割を担います。今回は、乳腺外科 部長/乳癌治療・乳房再建センター長 竹内賢先生に、チームで行うトータルケアの重要性についてうかがいました。

取材日:2021年8月
公開日:2022年1月5日

乳がん治療におけるチーム医療の重要性

 乳がん治療におけるチーム医療は多職種で構成され、その役割は多岐にわたります。例えば、薬剤師は薬物療法における副作用の予防や対策を担い、看護師は患者さんの疑問や不安への継続したサポートを担い、医療事務は経済的な問題のサポートを担います。そして、各職種の医療従事者が患者さんと関わって得た情報は医師に共有され、より安全で適切な治療を選択するための材料となります。

 チーム医療を行う場合、1人の患者さんに接する医療従事者の数は多くなり、患者さんと医療従事者が接する時間の合計も長くなります。そのため、患者さんは疑問や不安、要望などを医療従事者に伝えやすくなると考えています。患者さんからは「話を聞いてもらうだけで気持ちが楽になる」という声をよく聞きますので、話せる相手や時間が増えることは、安心して治療を受けるうえで大きなメリットになるといえるでしょう。

 再発や転移で治療が長期化する場合も含め、どの患者さんもがんという病気に向き合って、治療に臨んでいます。私たち医療従事者は、それに応えようとスタッフ一丸となってチーム医療に取り組んでいます。私自身、チームの一員としてのやりがいを感じながら日々の診療を行っています。

乳房再建において患者さんが選択すること

 患者さんの状態によって異なりますが、基本的に乳房再建手術の方法や時期は、患者さんの希望をもとに選択されます。再建手術では人工乳房(インプラント:図1)または自家組織(自分のからだの一部)のどちらを用いるかなど様々な選択肢があり、患者さんは迷われることが多いです。また、再建を乳がんの摘出手術と同時に行う場合もありますが、半年~1年後に時間を空けて行うことも可能であるため、再建についてどうするか悩む場合には摘出手術後に選択をする方法もあります。

 そして、乳房再建手術では美容的側面も重要な要素としてあげられます。再建手術をする側としない側の乳房を比べ、大きさや位置の差を考慮しながら手術方法を決めます。それぞれの選択肢にはメリット・デメリットがありますので、患者さんには医療従事者としっかり相談しながら再建について選択していただきたいと思います。

図1:人工乳房(インプラント)による再建

日本乳癌学会(編):患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版 第6版,金原書店,2019

乳がんの再発、転移に対する治療

 乳がんが再発、転移した場合であっても、薬でがんを抑えて普段と変わらない生活を送ることもできるようになってきました。乳がんの10年相対生存率*1は、どのステージ(病期)でも改善傾向にあり、乳がん全体で見ると、2015年の全国調査では80.4%でしたが、2021年は86.8%まで増加しています1,2)。この傾向の要因として、乳がん治療における新薬の登場があげられます。最近では遺伝子診断が導入され、原発乳がんだけではなく、再発、転移がんにも効果を示す遺伝子変異*2に対する薬剤も登場しました。今後の乳がん治療においては、遺伝子変異*2に対する新たな治療薬の開発が期待されています。

 乳がん治療の進歩によって生存率は改善してきていますので、様々な患者さんが必要な治療を受けられるような診療体制の構築が重要です。また、乳がんに対する治療は、これまでに得られたエビデンス(根拠・証拠)によって推奨度を示すガイドラインを重視して行いますが、副作用がつらいときには薬の量を減らす、治療間隔を延ばすなど、無理をせずに治療を考えることも大切です。そして、そのような患者さんそれぞれの症状や希望を汲み上げることも、チーム医療の大切な役割になります。

  • *1 生存率の大きな2つの示し方として、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた実測生存率と、対象疾患以外による死亡を補正した相対生存率があります(がん情報サービス:ganjoho.jpより)。
  • *2 細胞中の遺伝子がなんらかの原因によって後天的に変化することや、生まれもった遺伝子の違い
  • 1)公益財団法人 がん研究振興財団:がんの統計’15

    2)公益財団法人 がん研究振興財団:がんの統計2021

患者さん、ご家族へのメッセージ

 現在、乳がん薬物療法に使用できる新しい薬剤の開発が続いています。今後も乳がん治療は進歩が見込まれ、有効な薬物を安全に使うことが大切になります。安全な治療を続けるためには、患者さんご自身からの情報がとても重要ですので、治療に対する疑問や不安、希望などがあれば、1人で抱え込まずに身近な医療従事者に色々と話していただきたいと思います。

 がんと診断されたときや乳房再建を検討するとき、再発や転移で治療が長期化するときなど、治療の様々な場面で患者さんは不安を抱えると思います。そのようなとき、乳がんチームは患者さんに寄り添い、勇気づけ、継続して患者さんに関わっていきます。私自身、乳がん治療においてチームの存在はとても大きいと思っています。どの場面においてもチームが患者さんを支えますので、一緒に治療を進めていきましょう。

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