ホームHOPEFUL GARDEN神鋼記念病院 副院長兼乳腺センター長 山神 和彦 先生
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院内外の連携で充実した
チーム医療を実践

神鋼記念病院 副院長兼乳腺センター長 
山神 和彦 先生

 兵庫県の神鋼記念病院は、地域における中核的役割を担う急性期病院です。がん診療においては、民間病院でありながらも、国指定がん診療連携拠点病院として専門的ながん医療の提供、がん診療の地域連携協力体制の構築、がん患者・家族に対する相談支援及び情報提供等を行っています。今回は、副院長兼乳腺センター長の山神和彦先生にお話をうかがいました。

取材日:2021年1月
公開日:2022年2月16日

今、できることに最善を尽くすことが大切

 乳がんは、他のがんと比べて早期発見、早期治療によって良好な経過が得られることが報告されています。そのため、私達は早期発見、早期治療を目指し、最新の診断や治療をいち早く取り入れています。さらに臨床研究にも参加しながら、乳がん患者さんの生活の質を保ち、効果的な診療を心がけています。患者さんのなかには、残念ながら発見が遅れたり、他の部位に転移が見つかり根治(完全に治ること)が困難な場合もあります。そのような場合でも、今できることの最善を尽くし、患者さんを、多職種でのチーム医療で多面的に支えることが大切だと思っています。患者さんもチーム医療の一員として、私達と一緒に前向きな気持ちで乳がん治療に取り組んでいただけることを願っています。

専門性の高いチーム医療で乳がん診療を支える

 乳がん患者さんを支えるチーム医療は、乳がんを診断する画像診断医、病理医、切除する外科医、乳房再建を行う形成外科医、医師だけではなく、乳がん認定看護師を含めた各種専門看護師、薬剤師さらにはケースワーカーなどの多職種で構成されます。そして、それぞれのスタッフが個々の専門性の高い知識と技術で取り組むことで乳がん治療の選択肢がさらにひろがります。適切な治療を行うためには、まずは正確な診断です。診断能力の高い診断医(画像診断医や病理診断医)や技師(超音波検査技師や病理検査技師)との連携は極めて重要です。また、乳房再建に関しては、経験豊富な形成外科医が加われば、比較的手術が容易な人工物(インプラント)であっても、乳腺外科医単独で行うよりも整容性(美容)に関して良好な出来栄えが期待できます。そして、腹部の脂肪組織や筋肉などの自家組織を使用する乳房再建術も施行可能となり選択肢がひろがります。前述のように、現在のチーム医療は医師だけでなく、看護師や薬剤師、ケースワーカーなどのメディカルスタッフの参画も重要です。となれば、各医療機関の規模により可能なチーム医療は決まります。そこで、次に提唱されるのが、院内完結でなく地域で完結するチーム医療の重要性です。

*自家組織を使用する乳房再建術:患者さん自身の体の組織(腹部の脂肪や背中の筋肉など)を使って乳房再建を行う方法。

地域ぐるみのチーム医療も重要

 がん治療を行う上では、抗がん剤の副作用による口内炎や、手術後の肺炎を予防するための口腔ケアが重要(図1)で、歯科医との連携の必要性が提唱されています。しかしながら、大規模病院でないと口腔外科が併設されておらず、大多数の病院、クリニックでは院内連携ができないことになります。その場合、地域の歯科クリニックとのチーム医療が解決策の一つで、地域の歯科医師会を通じて連携を行うことが効率的と考えています。患者さんのみならず医療関係者が口腔機能管理(口腔ケア)の重要性を認識していただき、医科・歯科のスタッフを含めた顔の見える関係(勉強会や研究会等にて)での情報共有ができる体制を作る必要があります。多くの歯科クリニックとのチーム医療ができれば、歯科医の専門的な視点から細やかな口腔ケアを行うことが可能で、患者さんにとっても自宅から近い歯科クリニックを選べる、行きつけの歯科クリニックで対応対応してもらえるという長所があります。このように、地域の医療機関間での交流も大切なチーム医療の一つです。地域の病院とクリニックやクリニック同士の連携も強化しながら、患者さんを地域で支えるような体制、地域完結型のチーム医療が重要になってくると考えています。

周術期(手術の前後)における口腔ケアの啓発ポスター

図1:周術期(手術の前後)における
口腔ケアの啓発ポスター

患者さんへのメッセージ

 乳がんの治療においては、早期診断、早期治療が大切です。色々な事情でなかなか医療機関に行けない方もいらっしゃるかもしれませんが、乳がんは早期診断、早期治療によって完治する可能性が高くなり、治療の選択肢も拡がるため、心配なことがあればなるべく早く受診していただきたいと思います。治療は、患者さんの希望が最優先となりますが、例えば乳房再建ありきで来院されても現在の基準では強くは推奨されない場合がありますし、手術で根治が十分追及できる状態でも患者さんが手術を希望されない場合もあります。その場合、信頼できる施設でのセカンドオピニオンも有効で、いったん立ち止まり、じっくりと考えられることをお勧めします。治療が始まったら、チーム医療の一員である患者さんを中心に、多職種の院内外のスタッフが多面的に支えていきます。私達は、今後も最新の知識を取り入れ、新しい診断方法や治療のための研究を進めていきます。詳しくは最寄りの乳癌学会認定施設、関連施設(日本乳癌学会ホームページ参照:https://www.jbcs.gr.jp/modules/elearning/index.php?content_id=7)にご相談いただければと思います。

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