手術や放射線療法などが原因でリンパの流れが悪くなり、手術した手や腕がむくむことがあり、このような症状をリンパ浮腫といいます。
乳がんは、早期と考えられても一定の割合でリンパ節に転移がみられることがあります。そのため以前は、手術の際に乳房周囲、とくに腋窩(わきの下)のリンパ節を切除する腋窩リンパ節郭清が行われてきました。
近年は、センチネルリンパ節生検という、リンパ管に入ったがん細胞が最初にたどりつくリンパ節を調べる方法が確立し、センチネルリンパ節生検でがんを認めなければリンパ節には転移がないと判断できるため、手術の際に腋窩リンパ節郭清はあまり行われなくなってきました。
そのお陰で、重症のリンパ浮腫を起こす頻度は減ってきていますが、まれにセンチネルリンパ節生検によってもリンパ浮腫は起こることがあります。手術後2~3年以内に発症する場合が多いですが、10年以上経過した後に発症することもあり、一生を通じて注意する必要があります。
リンパ浮腫の初期症状には以下のようなものがあります。手術後3年間くらいは手術した側の手や腕をていねいに観察し、気になる症状があらわれた場合には、早めに主治医や薬剤師などに相談しましょう。
リンパ浮腫の治療では、早めに気づいて対応することが大切です。表に示すような治療を組み合わせて行い、症状を軽減したり、悪化を防ぎます。
用手的(ようしゅてき) リンパドレナージ |
●手を用いてリンパの流れを促す専門的なマッサージ(ドレナージ)です。 |
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圧迫療法 | ●弾性着衣(スリーブやグローブ)、弾性包帯を用いて圧迫します。 ●弾性着衣や弾性包帯の購入は療養費の支給をうけることができます。 |
圧迫下での運動療法 (エクササイズ) |
●圧迫した上に適度な運動を加え、リンパの流れを促進します。 |
スキンケア | ●低刺激の石けんや保湿剤を用いて、スキンケアを行います。 ●皮膚の清潔と保湿を保つことは感染予防にもつながります。 |
リンパ浮腫の予防のためには、発症や悪化のきっかけとなりやすいけがなどの炎症を予防し、皮膚を保護する、日頃のセルフケアが大切です。予防のための日常生活の注意点を紹介しますので、毎日の習慣にしましょう。
●虫さされやけがを予防しましょう
●手術した胸の周囲をしめつけないようにしましょう
●適度に腕を使うことは重要です
●頑張りすぎないことも大切です
1990年3月 大阪大学医学部卒業
1990年7月 大阪大学医学部付属病院第二外科(現病態制御外科)研修
1991年7月 吹田市立吹田市民病院外科 研修
1994年6月 大阪大学病態制御外科 研究生
1998年3月 大阪府立成人病センター乳腺・内分泌外科
2012年4月 近畿大学医学部外科 乳腺・内分泌部門 教授
【所属学会など】
日本乳癌学会
日本外科学会
日本癌治療学会
日本臨床腫瘍学会
日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会
日本臨床外科学会 など
【認定など】
日本乳癌学会専門医・指導医
日本外科学会専門医
検診マンモグラフィ読影認定医(B)
日本乳癌学会評議員
日本乳癌学会専門医制度委員会