副作用対策
化学療法の副作用
起こりやすい副作用は、化学療法で使用する抗がん薬(抗がん剤)の種類や患者さんの状態によって様々ですが、ここでは、よくみられる抗がん剤の副作用について注意していただきたい症状や対策のポイントを解説します。ここに挙げた症状以外でも、気になることや普段と違うことがありましたら、遠慮なく、主治医や薬剤師、看護師に相談してください。
また、「アレルギー反応」、「吐き気・嘔吐」、「発熱・貧血・出血(骨髄抑制)」については、予防的な対策や症状の軽減を目的として行う支持療法があります。支持療法については、抗がん剤をサポートする支持療法で解説されていますので、合わせてご参照ください。
アレルギー反応(過敏反応)
お薬が体質に合わない場合、まれに皮膚のかゆみや発疹、発熱などのアレルギー症状があらわれることがあります。過敏反応を起こしやすい抗がん剤を投与する場合には、抗がん剤投与前にアレルギー反応を抑える薬を予防的に投与することもあります。
お薬やアルコール、食べ物にアレルギーのある方は事前に主治医や薬剤師、看護師にお申し出ください。
注意が必要な症状
点滴中あるいは家に帰ってからでも、下記のような症状に気が付いたら、すぐに主治医や薬剤師、看護師に伝えて下さい。
●息苦しい ●汗が出る ●顔がほてる ●心臓がドキドキする
●胸が苦しい ●かゆみ、発疹が出る ●発熱
吐き気・嘔吐
吐き気は「ムカムカすること」、また嘔吐とは「吐いてしまうこと」です。抗がん剤の中には、吐き気や嘔吐を起こしやすい薬が多いため、様々な制吐剤が開発され、予防投与することで、コントロールできるようになってきています。
吐き気・嘔吐は、投与24時間以内に起こる場合や、なかには数日後に起こる場合もあります。
食欲がない場合や、吐き気・嘔吐がある場合は、下記を参考に食事を工夫してみるとよいでしょう。
対策のポイント
- 食べたいものや好きなものを、食べたい時に、少しずつ食べましょう
- 抗がん剤の投与を受ける日は、食事の量を少なめにするとよいでしょう
- 脂っこいものや香りの強いものは避けるとよいでしょう
- めん類やゼリー、フルーツ、ヨーグルト、冷たいスープなど、のどごしのよいものが食べやすいでしょう
発熱・貧血・出血(骨髄抑制)
抗がん薬の影響により、血液を作る骨髄の働きが弱まり、白血球や赤血球、血小板が減少することがあります。
細菌などから体を守る役割をもつ白血球の数が少なくなると、風邪などの感染症にかかりやすく、全身に酸素を運ぶ赤血球の数が少なくなると、貧血や体がだるいといった症状が現れます。血小板が減少すると、出血しやすくなったり、出血が止まりにくくなります。
治療期間中は、定期的に血液検査を行い、白血球や赤血球、血小板が減少していないかを確認します。
注意が必要な症状
- 38°C以上の発熱、悪寒、咳などの風邪のような症状
- めまい、立ちくらみが続く
- 身に覚えのない内出血や血便、鼻血などの出血
- 出血が止まらない
一般に投与1~2週間後がもっとも骨髄抑制を起こしやすい時期といわれています。発熱や寒気など、上に示した症状に注意し、症状があらわれた場合には、すぐに主治医に連絡してください。
対策のポイント
- こまめに手洗い、うがいをしましょう
- 体や口の中を清潔に保ちましょう
- 風邪をひいている人には近づかないようにしましょう
- 予防接種を考えている際は、必ず主治医に相談してください
- 走る、階段をかけ上がる、などの急激な運動は避けましょう
- 転んだり、頭をぶつけるなど、ケガに注意してください
脱毛
髪の毛の細胞も盛んに細胞分裂しているため、抗がん剤の影響を受けやすく、抗がん剤の種類によっては治療を開始して2~3週間後くらいから、髪の毛が抜け始めることがあります。
この脱毛は抗がん剤の作用によるものですので、多くの場合、治療が終了すれば髪の毛は生えてきます。
対策のポイント
- 髪の毛が長い方は、抗がん剤の治療を始める前に、短くしておくとよいでしょう
- 刺激の少ないシャンプーを使いましょう
- ドライヤーを使う時は低い温度に設定しましょう
- かつら(ウィッグ)、バンダナ、帽子などを上手に活用しましょう
- まつ毛やまゆ毛が薄くなることもあります。ポイントメークでカバーしましょう
口内炎
抗がん剤を投与してから2~14日後くらいに、口内炎ができ、口の中がヒリヒリしたり、食べ物がしみたりすることがあります。感染を予防するために口の中を清潔に保つことが大切です。
対策のポイント
- 抗がん剤の治療を始める前に、歯科を受診し、虫歯や歯周病などをチェックしておきましょう
- 起床時や食前後、就寝前などこまめにうがいを行い、口の中を潤わせておきましょう
- こまめに歯みがきをして、口の中を清潔に保ちましょう
- 歯ブラシは、やわらかいものを使いましょう
- かたいものや熱いもの、香辛料、アルコールなどの刺激物は避けましょう
倦怠感(だるさ)
抗がん剤を投与してから2~3日後くらいに、疲れやすい、身体がだるいといった症状を感じることがあります。だるさを感じる場合には、無理をしないようにしましょう。
対策のポイント
- 十分な睡眠、休養をとるようにしましょう
- 自分なりのリラックス法で、気分転換をしましょう
- 音楽を聞いたり、散歩などを行うのもよいでしょう
下痢・便秘
抗がん剤の種類によっては、腸の運動を活発にしたり、腸の粘膜にダメージを与えたりして、下痢を起こすことがあります。また、反対に腸の運動が弱くなったりして、便秘になることがあります。
下痢や便秘が長引く場合や、腹痛がひどくなった場合、また、おなかがはって苦しい場合などは、症状を改善するお薬を使うこともできますので、がまんせず主治医、薬剤師、看護師に相談しましょう。
対策のポイント〜下痢
- ぬるま湯や市販の経口補水液、スポーツドリンクで、十分な水分補給を心がけましょう
- 食事は少しずつ、何回かに分けて食べましょう
- お粥や煮込んだうどんなど、消化のよいものがよいでしょう
- 冷たすぎる飲み物や、脂っこいもの、刺激の強いものは避けましょう
対策のポイント〜便秘
- 水分を十分にとりましょう
- 食物繊維が多く含まれる食品を食べるとよいでしょう
- 主治医と相談のうえ、無理のない適度な運動を取り入れましょう
- 下剤を上手に活用しましょう
監修者略歴
KKR札幌医療センター
薬剤科 薬剤科長/治験管理センター 副センター長
玉木 慎也(たまき しんや)先生
- 平成11年 3月富山医科薬科大学(現 富山大学)薬学部 卒業
- 平成13年 3月同大学大学院 修了
- 平成13年 4月医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院 薬剤部
- 平成16年 8月国立病院機構北海道がんセンター 薬剤科
- 平成17年 7月同院 治験管理室 治験コーディネーター
- 平成19年 10月同院 治験管理室 治験主任
- 平成21年 4月同院 薬剤科 製剤主任
- 平成28年 4月同院 治験管理室 治験主任
- 平成30年 4月同院 薬剤部 病棟業務管理主任
- 令和2年 4月KKR札幌医療センター 薬剤科 薬剤主任
治験管理センター 副センター長 - 令和3年 4月同院 薬剤科 薬剤科長代行
治験管理センター 副センター長 - 令和4年 4月同院 薬剤科 薬剤科長
治験管理センター 副センター長
- 【所属学会など】
- 日本医療薬学会
- 日本臨床腫瘍学会
- 日本臨床腫瘍薬学会
- 日本がんサポーティブケア学会
- 日本乳癌学会
- 【認定など】
- 日本薬剤師研修センター認定薬剤師
- 日本医療薬学会 がん指導薬剤師,がん専門薬剤師
- 【その他】
- 日本医療薬学会 代議員
- 日本臨床腫瘍薬学会 代議員
- 日本医療薬学会 がん専門薬剤師研修小委員会 委員
- 日本臨床腫瘍薬学会 臨床研究委員会 委員
- 札幌病院薬剤師会 常任理事
- 札幌病院薬剤師会 がん専門薬剤師セミナー運営委員会 委員
- 北海道薬剤師会 学術・情報委員会委員
- 札幌薬剤師会 学術研修委員会委員